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文化の違いから見る「とりあえず」と英語の表現

ヒロシとエミリーはいつものように、ゼミの課題に取り組んでいます。提出期限があまりないので、ヒロシはエミリーに提案します。

今日のトピックは「とりあえず」。


エミリー: ヒロシ、今回のゼミの課題もいつものように、随分多いわね。これじゃ期限まで間に合うかしら。

ヒロシ: ほんとだよね。あの教授、いつも簡単に課題を出すけど、やるほうの身にもなってほしいよ。と言っててもしかたがないので、とりあえず、ここから手をつけるか。

エミリー:何「とりあえず」って。

ヒロシ: ああ、「とりあえず」ね。日本語でめっちゃ便利だし、良く使う言葉だよ。「まずこれをする」とか「一旦これにする」っていう意味かな。

エミリー: へえ。「まずこれをする」って言うなら「まずは」でいいんじゃないの?どう違うの?

ヒロシ: 「まずは」はもっと真面目というか、ちゃんと考えて決めた感じがするんだ。でも「とりあえず」は、深く考えずにとにかく始める、みたいな軽い感じがある。

エミリー: なるほど。「とりあえず」には柔らかいニュアンスがあるんだね。

ヒロシ: そうそう。たとえば、今回の課題が多い時なんかに、「とりあえず簡単なものからやろう」って言うと、「全部終わらなくても、まずはできることをやる」みたいな気持ちになる。

エミリー: 日本語らしい考え方だね。英語だったら、「今はこれをやる」みたいな感じ?でも、それだけじゃ「とりあえず」のニュアンスを全部カバーできない気がする。「for now」とか「let's start with」が近い意味になるかもだけど、完全に同じではないかな。日本語の「とりあえず」って、すごく柔軟な感じがする。迷っているときでも、とにかく行動を始めるための言葉みたい。

ヒロシ: その通り!だから、エミリーも使うと便利だよ。たとえば、昼ご飯を選ぶときに「とりあえずサラダにしよう」って言うと自然だね。

エミリー: あ、いいね!なんかその言い方、ちょっと自信がなくても大丈夫な感じがしていいね。

ヒロシ: そうだよ。「とりあえず」には、失敗してもいいとか、後で変えてもいいっていう軽い気持ちも入ってると思う。

エミリー: 日本語のこういう表現、本当に面白い。英語だと、あんまり曖昧さを許さない感じがするけど、日本語はそこが違うんだね。

ヒロシ: うん、曖昧さが良い意味で使われるのが日本語の特徴かも。文化の違いが出てるよね。

エミリー: 本当にそうだね。とりあえず、私もどんどん使ってみる!

ヒロシ: いいね!じゃあ、とりあえず今日はこの課題からやってみるか。

エミリー: そうね、とりあえず初めましょう。

解説

「とりあえず」は、特に日本人の柔軟な考え方を反映した言葉で、「深く考えずにまずこれをする」「後で変えるかもしれないけど今はこれでいい」というニュアンスがあります。行動を始めるときや、一時的に決定を下す場面でよく使われます。

英語に訳すときには、"for now"や"to start with"が近い表現ですが、「軽い曖昧さ」や「柔軟性」のニュアンスは日本語特有と言えるでしょう。

例文と訳

  1. とりあえず簡単な宿題から始めよう。
    (Let’s start with the easy homework for now.)
  2. 全部は決まってないけど、とりあえず進めてみよう。
    (We haven’t decided everything, but let’s move forward for now.)
  3. とりあえずサラダでいいですか?
    (Is it okay to start with a salad for now?)
  4. 何をするかわからないけど、とりあえず行ってみよう。
    (I’m not sure what to do, but let’s just go for now.)
  5. とりあえず今日はここまでにしよう。
    (Let’s call it a day for now.)

アメリカ人にとっての「とりあえず」

英語話者がこれらの表現を使うシーンは、日本語の「とりあえず」と重なる部分もあります。ただし、以下の点で感覚が異なるかもしれません:

  1. 文化の違い:明確なプランを好む傾向
    アメリカでは、特に何かを決める場面では具体的で明確な計画を重視することが多いです。「とりあえず」で一旦保留するような曖昧さを少し避ける傾向があります。例えば、グループで何かを決めるときに「とりあえずこれでいいんじゃない?」という曖昧な提案をするより、「これが良い理由」といった具体的な説明を求められることが多いです。
  2. 「とりあえず」の頻度が低い
    日常会話では、「とりあえず」に当たる表現が使われる頻度は日本語ほど多くありません。これは、曖昧さがある程度許容される日本の文化的背景と違い、英語圏ではその場でしっかりと意見を述べることが求められる場面が多いからです。
  3. 行動の柔軟性
    「とりあえずやってみる」というニュアンスは英語圏にも存在しますが、その場合は「Just try it.」や「Let's go for it.」のように、もう少し「勢い」や「やってみる価値」にフォーカスした表現になります。

では、アメリカ人は「とりあえず」に代わる考え方をどうする?

アメリカ人が「とりあえず的な行動」を取る場合でも、それを明確に言葉にしないことがあります。例えば、何かを保留にする際には「We'll figure it out later.」(後で決めよう)と言ったり、軽い提案として「How about we start with this?」(これから始めるのはどう?)と、曖昧さを避ける言い回しが好まれることがあります。

結論

アメリカ人も「とりあえず」の感覚で行動することはありますが、文化的な背景から、その曖昧さを直接言葉にする頻度は少ないです。むしろ「明確さ」や「論理的な理由付け」を伴う表現が求められる場面が多いです。それでも、日常的な軽い会話や選択の場では、「for now」や「start with」で同じような気持ちを伝えることは十分可能です!

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