
エミリーは本屋のコーナーで、2025年の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」が取り上げられているのを見つけました。エミリーは日本語の勉強のためと、大河ドラマは時々みています。きになったのが、「べらぼう」という言葉。早速、ヒロシに質問します。
エミリー: ヒロシ、大河ドラマの特集を本屋で見てたんだけど、「べらぼう」って言葉がタイトルについてるドラマがあるみたい。これってどういう意味?
ヒロシ: ああ、「べらぼうめ」か。エミリーの興味も江戸時代まで来たか・・・・。これは昔の江戸っ子がよく使ってた言葉で、今は日常ではまず聞かないけど、時代劇とか落語ではよく出てくるよ。
エミリー: へえ、江戸時代の言葉なんだね。どんな意味?
ヒロシ: うーん、一言で言うと「とんでもない!」とか「ばかやろう!」みたいな感じかな。でも、ただの悪口じゃなくて、ちょっとユーモアとか愛嬌のある言い方でもあるんだよ。たとえば、友達同士で「お前、べらぼうめ!」って言ったら、「このやろう、ふざけるな!」みたいな感じだけど、そこまで怒ってるわけじゃなくて、ちょっと冗談っぽいニュアンスがあるんだ。
エミリー: なるほど、単なる悪口というより、親しみを込めた乱暴な言葉って感じ?
ヒロシ: そうそう!ちなみに「べらぼう」単体だと「ものすごい」とか「すごく変な」という意味にもなるよ。たとえば、「べらぼうに高い」って言うと、「めちゃくちゃ高い」っていう意味になるし、「べらぼうな話」って言うと「ありえない話」とか「とんでもない話」ってことになる。
エミリー: えー、じゃあ「べらぼう」って形容詞的に使えるんだね!英語だと、「outrageous(とんでもない)」とか「ridiculous(ばかげた)」に近いのかな?
ヒロシ: うん、それが一番近いかも。でも「べらぼうめ!」っていうフレーズ自体は、単純に「You fool!(このバカ!)」とか「You idiot!(バカヤロウ!)」みたいに訳すことが多いみたいだよ。
エミリー: そっか。でも日本語の「べらぼうめ!」には、もうちょっと芝居がかった感じがあるよね。英語だとちょっとキツく聞こえそう。
ヒロシ: そうだね。時代劇で「べらぼうめ!」って言うと、江戸っ子らしい威勢のいいセリフになるし、完全に怒ってるというより「粋(いき)」な感じが出ることもあるよ。
エミリー: 「粋」ってことは、なんか江戸っ子らしいユーモアとかカッコよさがあるってこと?
ヒロシ: そうそう!江戸っ子って短気だけど、さっぱりしてて情に厚いって言われることが多いんだ。だから「べらぼうめ!」も、単なる怒りの言葉じゃなくて、そういう江戸っ子気質を表すようなセリフなんだよ。
エミリー: なるほどね。じゃあ英語にするなら、ただの「You fool!」じゃなくて、ちょっと芝居がかった感じの「You rascal!(このいたずら者め!)」とか「You scoundrel!(この悪党め!)」みたいな言い方もアリかも?
ヒロシ: おお、それいいね!「You scoundrel!」とか、ちょっと古風な響きがあって、時代劇っぽい感じがする。
エミリー: よし、じゃあ大河ドラマを見るときに「べらぼうめ!」って聞いたら、「You scoundrel!」って脳内翻訳してみるね!
ヒロシ: いいね!時代劇を見るのがもっと楽しくなるかもよ!
解説
●「べらぼうめ」の語源と意味
「べらぼう」は江戸時代の俗語で、語源には諸説あります。「べろ坊(ぼう)」から転じた説や、「無頼坊(ぶらいぼう)」が変化したという説があり、どちらも乱暴者や無鉄砲な者を指す言葉とされています。
また、「め」は江戸言葉で人を指す接尾語で、「この野郎め!」の「め」と同じ使い方をします。そのため、「べらぼうめ!」は「この無茶なやつめ!」というニュアンスを持つ言葉になりました。
● 現在の使われ方
「べらぼうめ!」は時代劇や落語などの古風なセリフとしては耳にするものの、日常会話ではほとんど使われません。しかし、「べらぼうに高い」や「べらぼうな話」などの形容詞的な使い方は現代でもよく使われます。
● 英語でどう表現する?
「べらぼうめ!」を英語に訳す際には、状況によって適切な表現を選ぶ必要があります。
- 罵倒・侮辱の意味(「バカ者!」)
- "You fool!"(お前はバカか!)
- "You idiot!"(このバカ!)
- "Damn you!"(くそったれ!)
- "You scoundrel!"(この悪党め!)(時代劇風のニュアンス)
- 「とんでもない・法外な」という意味
- "Outrageous!"(とんでもない!)
- "Ridiculous!"(ばかげてる!)
- "That's insane!"(バカげてる!)
- 「べらぼうに高い」→ "That's ridiculously expensive!"(法外な値段だ!)
- 「べらぼうな話だ」→ "That's an outrageous story!"(とんでもない話だ!)
- 江戸っ子らしいユーモラスな罵倒表現
- "You knucklehead!"(まぬけめ!)
- "You blockhead!"(バカ者!)
- "What a load of baloney!"(くだらない!)
「べらぼうめ!」は単なる罵倒ではなく、江戸っ子らしい勢いやユーモアを含んだ表現なので、英語訳を選ぶときもニュアンスを意識するとよいでしょう。
JLPT(日本語能力試験)には該当しません。