
5月のある午後、ヒロシとエミリーは大学のカフェでおしゃべりしていた。ふとカレンダーを見ると、もうすぐ「母の日」。ヒロシは今まで母の日に何もしたことがなかったが、今年は何か贈ろうかと考えていた。でも、なんとなく「照れくさくて」躊躇している。そんなヒロシが、エミリーにアメリカの母の日の話を聞いてみることにした。
ヒロシ: エミリーって、母の日って何かする?
エミリー: うん、アメリカではけっこう大事な日だよ。毎年、メッセージカードを書いて、今年は日本で見つけた伝統的な人形を送ろうと思ってる。あと、浮世絵のポストカードも!
ヒロシ: えらいなー、ちゃんとしてるんだね。俺、今まで母の日に何もしたことなくてさ。学生だからまだ早いかなーとか思ってたけど、今年は何かしようかなって。
エミリー: いいじゃん、それ!何あげるつもり?
ヒロシ: うーん、まだ決めてないけど……なんか、「照れくさい」んだよね。
エミリー: てれくさい?それ、どういう意味?
ヒロシ: あー、「なんか恥ずかしい」って感じ?別に悪いことしてるわけじゃないけど、気持ちを言ったり、何かしてあげたりするのが、なんとなくこっぱずかしいっていうか。
エミリー: なるほどね。そういう気持ち、英語では “I feel shy” とか “It’s embarrassing in a cute way” って言えるかも。ちょっと気恥ずかしいけど、優しい気持ちもあるってニュアンスかな。
ヒロシ: うん、まさにそれだわ。でも、ありがとうって伝えるだけでもいいかな。
エミリー: うん、それで十分だよ。絶対ヒロシのママ、喜ぶと思う!
解説
- 照れる(tereru):恥ずかしがる、特に感情を見せることや褒められることに対する照れの感情。
- 〜くさい(〜kusai):ある性質や雰囲気がにじみ出ていて、それが“ちょっと気になる”“わざとらしい”“不自然に感じる”といった意味を持つ。
「〜くさい」は、形容詞として使われる語尾で、以下のような自然な用例があります:
- うそくさい(usokusai):本当っぽいけど、どこか怪しい感じがする
- わざとくさい(wazatokusai):わざとやってるように見える、自然じゃない
- 芝居くさい(shibaikusai):演技っぽくて嘘っぽい、感情が過剰
このように、「〜くさい」はある性質が“表に出すぎている”という印象を与えます。
「照れくさい」の意味
「照れくさい」は、「照れている感じがにじみ出ていて、落ち着かない・こそばゆい・ちょっと恥ずかしい」といった複雑な感情を表します。単に「照れる」だけでなく、「人に見られると恥ずかしい」「伝えるのが気恥ずかしい」といった心理的抵抗も含まれます。
英語での表現とニュアンスの違い
完全に一致する英語表現はありませんが、近い意味を持つものを文脈によって使い分けます。
- I feel a bit embarrassed saying this.
これを言うのはちょっと恥ずかしい。 - It feels awkward to say thank you.
ありがとうって言うのが、なんか照れくさい(気まずい)感じ。 - I get shy when I do things like that.
そういうことをすると照れちゃう。 - I feel self-conscious giving gifts.
プレゼントを渡すのって、なんか意識しちゃって照れる。
どれも「照れくさい」の一部のニュアンスはカバーしますが、「〜くさい」が持つ“見られてる感”“不自然に思われそう感”まではカバーしきれません。そういうときは、トーンや文脈で「ちょっとしたこそばゆさ」や「気持ちの恥じらい」を伝える必要があります。
母の日の由来と日米の違い
アメリカの母の日のはじまり
アメリカの母の日(Mother’s Day)は、1908年、ウェストバージニア州のアンナ・ジャービス(Anna Jarvis)が、亡き母を偲ぶために教会で追悼式を開いたことがきっかけです。彼女の母親は、南北戦争中に負傷兵を助ける「Mother’s Day Work Clubs」という団体を作り、地域の福祉に貢献した人物でした。
アンナは「母の愛と平和への貢献をたたえる日」を国に広めようと運動し、その結果、1914年にウッドロウ・ウィルソン大統領が5月の第2日曜日を「母の日」とすることを公式に認めました。
アメリカでの母の日の過ごし方
アメリカでは母の日は非常に重要な祝日のひとつで、子どもや家族が母親に感謝の気持ちを伝える日とされています。感謝の伝え方は多様で、以下のようなことがよく行われます:
- 花(特にカーネーションやバラ)を贈る
- メッセージカードや手紙を書く
- 一緒に外食に出かける(ブランチが人気)
- ギフトカードやジュエリー、スパチケットなどを贈る
商業化とその影響
アンナ・ジャービス本人は、母の日が商業的になりすぎることに反対していました。彼女は「高価なカードやプレゼントではなく、心からの感謝を伝えること」が本来の目的だと考えており、商業化に反発して晩年はキャンペーンにも抗議するようになります。
それでも現在のアメリカでは、母の日は1年で最もギフト関連の売上が高い時期の一つです。レストラン予約、花屋、スパ、デパートなどが大々的なセールやキャンペーンを行います。
日本の母の日の成り立ち
日本では、昭和初期に香淳皇后の誕生日(3月6日)を「母の日」として祝っていたのが始まりです。その後、戦後のアメリカ文化の影響により、現在と同じく5月の第2日曜日に定着しました。
日本でもカーネーションを贈るのが一般的で、母の日の前になるとスーパーや百貨店には特設コーナーが並びます。プレゼントの定番は以下のようなものです:
- カーネーションや花束
- 手作りのプレゼント(特に子どもから)
- エプロン、ストール、お菓子などの実用品
- メッセージカード
日米の違い
項目 | アメリカ | 日本 |
---|---|---|
日にち | 5月第2日曜日 | 同じ(戦後アメリカから導入) |
プレゼント文化 | 高価なギフトも多い | 手軽で実用的なものが中心 |
商業性 | 非常に高い(売上のピーク) | 年々商業化が進むが、比較的控えめ |
感謝の伝え方 | 食事やギフト、サプライズが多い | 手紙や手作りも根強い |
「照れくさい」を英語で説明する
"Terakusai" is a Japanese word that expresses a shy, slightly embarrassed feeling when doing something kind or affectionate, such as giving a gift or saying "thank you."
「照れくさい」とは、誰かに優しくしたり、感謝を伝えたりする時に感じる、少し恥ずかしいという感情を表す日本語の言葉です。
Terakusai(照れくさい) は日本語能力試験(JLPT)N3に該当します。
※日本語能力試験(JLPT)では、出題語彙の公式リストは公開されていません。このレベル表示は、実際の試験問題や教材に基づいた目安として記載しています。