エミリーはホストファミリーの誘いで年末年始、東北の温泉地を旅行した。おみやげに買ってもらった「こけし」が気に入り、小さなキーホールダーもスマホにつけている。スマホについたこけしを見て、ヒロシがエミリーに尋ねる。
ヒロシ: お、これってこけしじゃん!エミリー、東北行ったの?
エミリー: そう!年末にホストファミリーと一緒に温泉旅行に行ったんだ。すごくいいところだったよ。「こけし」もお土産に買ったんだけど、これはキーホルダーのミニ版!かわいくない?
ヒロシ: うん、かわいいね。でも、こけしってさ、昔からあるけど、発祥の起源とか多分、エミリーは知らないかもね。
エミリー: うーん…「木で作られた日本の伝統的な人形」って感じかな?
ヒロシ: そうそう、確かにその通りだね。でももうちょっと詳しく説明すると、こけしは主に東北地方で作られる木製の人形で、頭と胴体だけのシンプルな形をしてるんだ。一般的には顔が手描きされていて、胴体には花や模様が描かれていることが多いよ。
エミリー: そういえば、こけしって手足がないよね?なんで?
ヒロシ: それにはいくつか説があるんだけど、一つは「子どもを象徴しているから」っていう説だね。昔、東北の農村では子どもの死亡率が高くて、こけしを子どもの代わりに大事にしたって話もあるんだ。
エミリー: えっ、こけしって子どもを表してるの?
ヒロシ: そういう説もあるみたい。でも、もう一つ、ちょっと悲しい話もあるんだ。
エミリー: どんな話?
ヒロシ: これも定説ではないんだけど、「こけし」という名前が「子を消す」に通じるっていう解釈もあるんだ。昔の東北地方では貧しさのために子どもを育てられない家庭があって、そういう悲しい現実をこけしが象徴しているっていう説もあるんだよ。
エミリー: …それは、ちょっと切ない話だね。
ヒロシ: うん。でも、これはあくまで一つの解釈で、こけし自体は職人さんたちが代々受け継いできた大事な伝統工芸品なんだ。だから、今では「こけし=悲しい話」じゃなくて、「こけし=東北の文化と職人技の象徴」っていうふうに考えられてるよ。
エミリー: なるほどね。悲しい話もあるけど、それ以上に歴史や文化が詰まってるんだね。
ヒロシ: そうそう!あと、こけしにはいろんな種類があって、作られる地域によってデザインが違うんだ。「伝統こけし」と「創作こけし」の2つに大きく分かれるんだけど、伝統こけしは昔ながらのシンプルな形で、11種類くらいの系統があるんだ。例えば、宮城県の「鳴子こけし」は、首を回すとキュッキュッて音が鳴るのが特徴だよ。
エミリー: えっ、それ面白いね!私はお土産屋さんでいろんなデザインのこけしを見たけど、そんなに種類があるとは知らなかったな。
ヒロシ: 最近は「創作こけし」っていう、もっと自由なデザインのものも人気だよ。アニメキャラっぽいデザインだったり、カラフルなものも増えてる。昔ながらのものとは違うけど、こけし文化を広めるのに一役買ってる感じかな。
エミリー: なるほどね。でも、英語で説明するのはちょっと難しいなぁ…どう言えばいいかな?
ヒロシ: うん、どんなふうに言うの?
エミリー: うーん、「Kokeshi are traditional Japanese wooden dolls, originally from the Tohoku region. They have a simple shape, with a round head and a cylindrical body, and are often decorated with hand-painted patterns.」って感じかな。
ヒロシ: ほうほう、シンプルだけどわかりやすいね!「cylindrical body」っていうのが胴体の形をちゃんと説明してるんだね。
エミリー: そうそう!「cylinder」って円柱って意味だから、こけしの胴体の形にピッタリなんだよね。あと、「hand-painted patterns」って言うと、手描きの模様があるっていうニュアンスも伝わるよ。
ヒロシ: なるほどなぁ。英語で説明すると、こけしのシンプルなデザインがちゃんと伝わる感じがするね。
エミリー: うん!やっぱり文化を説明するのって面白いね。ヒロシの説明のおかげで、こけしのことがよく分かったよ!
ヒロシ: いやいや、こっちこそ英語の表現が勉強になった!エミリーのキーホルダー、いいお土産だね。
エミリー: でしょ?お気に入り!
「こけし」はいつ頃から作られたのか?
こけしの歴史は 江戸時代後期(およそ1800年代初め) にさかのぼると考えられている。東北地方の温泉地で、木工職人(「木地師(きじし)」)たちが湯治客向けのお土産として作り始めたのが始まりとされている。特に、宮城県の鳴子温泉や遠刈田(とおがった)温泉などが発祥地といわれることが多い。
当時、こけしは主に子どもたちの遊び道具(木製の郷土玩具)として作られたが、次第に装飾が凝ったものや、大人の観賞用のものも作られるようになり、伝統工芸品として発展していった。
解説
こけしの由来にはいくつかの説がある。以下に代表的なものを紹介する。
- 木地師(きじし)の作った「木の人形」説
- 「こけし」は木工職人(木地師)が作った「木の人形(木製の玩具)」を意味するという説。
- もともと「木で作られた子どものおもちゃ」として、温泉地で販売されていたことからこの説が生まれた。
- 「こけし」という名前の由来も、木を意味する「木(き)」と、削ることを意味する「削る(けずる)」が組み合わさったものと考えられる。
- 子どもの身代わり説
- 昔、東北地方では寒さや食糧不足のために子どもの死亡率が高かった。そのため、こけしは「亡くなった子どもの身代わり」や「供養」のために作られたという説。
- 特に、親が亡くなった子どもの代わりにこけしを大切にしたり、健康祈願としてこけしを飾ったりする風習もあったと言われる。
- 子どもを抱く「小芥子(こけし)」から来た説
- 「こけし」という名前は、昔「小芥子(こけし)」と呼ばれていたことに由来するという説。
- 「芥子(けし)」は、細かくて小さなものを指すことがあり、「小芥子(こけし)」が「小さな人形」の意味で使われたのではないかと考えられている。
- しかし、この説には明確な証拠がなく、後世の解釈の一つとされている。
- 「子を消す(こけし)」という悲しい語呂合わせ説
- これは定説ではなく、あくまで一つの解釈だが、「こけし」という名前が「子を消す」と読めることから、望まれずに亡くなった子どもたちを弔うために作られたという説もある。
- しかし、これは後の時代になって生まれた俗説であり、歴史的な根拠はない。ただし、東北地方の厳しい生活環境を背景に、このような解釈が生まれた可能性はある。
「こけし」を英語で説明する
Kokeshi dolls originated in the late Edo period (early 1800s) in the hot spring regions of Tohoku, Japan. Initially, they were made as simple wooden toys for children, crafted by woodworkers known as kijishi. Over time, kokeshi evolved into valuable folk crafts and traditional art pieces, leading to the distinction between traditional kokeshi and creative kokeshi today.
The exact origin of the name "kokeshi" is unclear, but one common theory suggests that it comes from the words for "wood" (ki) and "to shave" (kesu). Other theories link kokeshi to spiritual or cultural meanings, such as symbolizing children, being used as substitutes for lost children, or as protective charms for health and prosperity. One later interpretation suggests a sadder meaning—relating "kokeshi" to "ko wo kesu" (erasing children)," though this is a modern theory without historical evidence.
Despite various interpretations, kokeshi remain an important part of Japan’s cultural heritage. Today, they continue to be loved not only as traditional crafts but also as modern collectibles, with creative kokeshi featuring innovative designs and contemporary themes gaining popularity worldwide.
こけしは江戸時代後期(1800年代初め)に東北地方の温泉地で誕生し、当初は子どもの遊び道具として作られていた。しかし、時代とともに民芸品・工芸品としての価値が高まり、現在では「伝統こけし」と「創作こけし」の2つのスタイルに分かれて発展している。
こけしの由来については明確な記録は残っていないが、「木地師が作った木の人形」という説が有力とされている。一方で、こけしには「子どもの身代わり」や「供養」といった、東北地方の歴史や風習にまつわる説もある。さらに、悲しい語呂合わせの解釈も存在するが、これは後の時代に考えられたものとされている。
現在、こけしは日本の伝統文化を象徴するアイテムの一つとして、国内外で人気が高まっている。特に、現代風の「創作こけし」は若者にも親しまれ、こけし文化が新たな形で広がっている。