pickup
「忖度(そんたく)」人間関係の難しさを英語で表現する

エミリー: ヒロシ、「忖度」って言葉、最近ニュースとかでよく見るんだけど、正直どういう意味か分かってないの。何か偉い人に気を使うみたいなイメージがあるんだけど、本当の意味は違うの?

ヒロシ: お、また難しい言葉持ってきたね。確かに「忖度」って最近ちょっと独特な使われ方をしているけど、本来の意味を知ると面白いよ。

エミリー: 本来の意味ってどういうものなの?

ヒロシ: 忖度っていうのは、もともと「相手の気持ちや考えを推し量ること」を意味する言葉なんだ。「忖」も「度」も、何かを計るとか推測するっていうニュアンスを持ってる。だから、例えば「相手がどう思っているかを考えて行動する」っていう、とても中立的でポジティブな意味で使われることが多かったんだ。

エミリー: へえ、そうなんだ。でも最近のニュースだと、上司とか偉い人にゴマをすったり、必要以上に気を使うみたいなネガティブな使われ方が多くない?

ヒロシ: その通りだね。今では、「忖度」が「相手の顔色を伺ってへつらう」とか、「必要以上に相手に合わせる」っていう、ちょっと批判的な意味で使われることも増えているんだ。たとえば、ある政治家が部下に「自分の意図を忖度して行動してほしい」みたいなことを言うと、それが「お世辞を言ったり、過剰に気を使う」って解釈されることがある。

エミリー: なるほど。じゃあ、元々は相手を思いやる気持ちから来た言葉なのに、今はネガティブなイメージが強いんだね。

ヒロシ: そういうことだね。でも、本来の「忖度」自体は悪いことじゃなくて、むしろ相手を思いやるとか気配りをするっていう、良い意味合いなんだよね。

エミリー: それを聞くと、英語でどう説明すればいいか難しいね。「忖度」って一言で表すのは難しそう。

ヒロシ: 英語だとどう訳せると思う?

エミリー: Hmm... 一番近い表現としては "to read someone's mind" とか "to anticipate someone's needs" かな。ただ、これだけだとポジティブな意味に偏りすぎるから、今のネガティブな使い方も説明したほうがいいかも。例えば、"to overly cater to someone's expectations" とか "to flatter or pander to someone" って言い方が近いかも。

ヒロシ: ああ、なるほど。確かに状況によってニュアンスを変える必要があるんだね。じゃあ、こういう例文を英語で作るならどうなる?

エミリー: 例えば、ポジティブな意味なら、"He has a great ability to anticipate his clients' needs." っていう感じ。これは「彼はクライアントのニーズをうまく察する能力がある」っていう意味ね。ネガティブな使い方なら、"The staff seemed to overly cater to the CEO's every whim." とかどう?「スタッフはCEOのあらゆる気まぐれに過剰に気を使っているようだった」ってニュアンス。

ヒロシ: それ、分かりやすいね!やっぱり英語だとポジティブとネガティブのニュアンスを分けて説明するのが大事なんだね。

エミリー: うん、日本語の「忖度」はニュアンスが広いから、英語にするときは文脈を考えないとね。でも、日本語のこの微妙なニュアンスの豊かさ、すごく面白いと思う!

ヒロシ: そう言ってもらえると嬉しいよ!エミリーの説明もすごく分かりやすかった。ありがとう!

エミリー: どういたしまして!またこういう言葉の話、したいね。

解説

忖度(そんたく)の本来の意味

「忖度」は、もともと日本語で「相手の気持ちや考えを推し量ること」を意味します。「忖」も「度」も、それぞれ「測る」「考える」というニュアンスを持っています。このため、本来は相手を思いやり、言葉にされていない意図や感情を汲み取って行動するという、非常にポジティブな意味がありました。例えば、以下のような状況で使われます:

  • : 部下が上司の意図を汲み取り、適切な対応をとる。
  • 例文: 部長の意図を忖度して、スムーズにプロジェクトを進めました。
    (The team anticipated the manager's intentions and moved the project forward smoothly.)

現代のネガティブな使われ方

近年では、特に政治やビジネスの場面で、「忖度」が批判的に使われるケースが増えています。この場合、「権力者や上司に気を使いすぎて、自分の意見を持たずに従う」や「ゴマをする」というニュアンスが含まれます。ネガティブな「忖度」は、以下のような状況を指します:

  • : 社員が上司の意見に無理やり合わせ、自分の本音を隠す。
  • 例文: 社長に忖度して、本当の意見が言えなかった。
    (They overly catered to the CEO's opinion and couldn’t voice their true thoughts.)

ポジティブなニュアンスの英語表現

「忖度」の本来の意味に近い英語表現は以下の通りです:

  • to anticipate someone's needs
    (相手のニーズを予測する)
    例: He has a great ability to anticipate his clients' needs.
    (彼はクライアントのニーズを察する能力に長けている。)
  • to read someone's mind
    (相手の心を読む/考えを察する)
    例: Without speaking, they seemed to be reading each other's minds.
    (言葉にせずとも、お互いの心が通じているようだった。)

ネガティブなニュアンスの英語表現

一方、最近の批判的な使われ方に近い英語表現は以下の通りです:

  • to overly cater to someone's expectations
    (相手の期待に過剰に応じる)
    例: The staff seemed to overly cater to the CEO's every whim.
    (スタッフはCEOのあらゆる気まぐれに過剰に気を使っているようだった。)
  • to flatter or pander to someone
    (相手におべっかを使う/へつらう)
    例: Some politicians pander to their supporters instead of acting on their true beliefs.
    (一部の政治家は、自分の信念よりも支持者におべっかを使うことを優先している。)

日本語と英語のニュアンスの違い

日本語の「忖度」は、単語そのものがポジティブな文脈でもネガティブな文脈でも使われるため、状況に応じた解釈が求められます。一方、英語ではニュアンスを区別するために異なる表現を使い分ける必要があります。

  • ポジティブな場面:他人の気持ちやニーズを汲み取り、思いやりを示す。
    • to anticipate someone's needs
    • to read someone's mind
  • ネガティブな場面:権力者や他者に気を使いすぎて行動する。
    • to overly cater to someone's expectations
    • to flatter or pander to someone

文化的背景

「忖度」は日本の「察する文化」に深く根付いています。日本社会では、相手の言葉にされない意図を読み取ることが美徳とされる一方で、行き過ぎた「忖度」は、個人の意見が埋もれてしまう原因ともなり得ます。このため、適切なバランスを保つことが重要とされています。英語圏では、相手の期待を察することよりも、自分の意見を明確に伝えることが重視される傾向があるため、「忖度」の翻訳には文化的な違いも考慮する必要があります。

おすすめの記事