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「へそ曲がり」性格を表す日本語を英語でなんていうのでしょう?

ヒロシとエミリーは、大学のキャンパス近くのカフェでお茶をしていた。桜の花びらが少し舞っている午後、ヒロシは課題への不満をぽつりと漏らした。ふと彼が「オレ、へそ曲がりだからさ」とつぶやくと、エミリーは小さく首をかしげた。


エミリー えー?ヒロシ、何その“へそ曲がり”って」

ヒロシ「あれ、知らない? まあ、ちょっと変な言葉だよな。オレも昔は意味わかんなかった。」

エミリー「“へそ”って、お腹の真ん中の“へそ”?それが“曲がる”?身体的な意味じゃないのよね?」

ヒロシ「そう、実際には体が曲がってるわけじゃなくて、気持ちとか性格の話。たとえばさ、人に『こっちの道がいいよ』って言われると、なんか反対に行きたくなることない?」

エミリー「うん、それは分かるかも。あえて逆のことを言いたくなる時ってある。でも、それが“へそが曲がってる”って言うんだ?」

ヒロシ「うん。オレもそういうとこあるから、自分のこと“へそ曲がり”って言ったりするんだ。素直じゃない、って感じかな。」

エミリー「面白い表現ね。文化的な背景もありそう。」

ヒロシ「あ、似た言葉で『天邪鬼(あまのじゃく)』ってのもあるんだけど、そっちは聞いたことある?」

エミリー「それは聞いたことあるかも。日本の昔話に出てくる小さな鬼?」

ヒロシ「そうそう。『やるな』って言われるとやる、『行くな』って言われると行く、みたいな。人の言うことに逆らう性格の象徴みたいな存在。」

エミリー「じゃあ、『天邪鬼』的な性格の人を日常では“へそ曲がり”って言うのね?」

ヒロシ「そういうこと。まあ、いい意味じゃないけど、自分をちょっと茶化すときに使うこともあるかな。」

エミリー「なるほど。じゃあ、“へそ曲がり”の言葉の構造とか、他の言語との違いも知りたくなってきた。」

ヒロシ「じゃあ、説明するね。

解説:「へそ曲がり」という言葉について

意味・使い方・感情的含意
「へそ曲がり」とは、一般的に「素直でない」「言われたことにあえて逆らいたがる人」を指す表現です。誰かが提示した「こうあるべき」「こうすべきだ」という方向に対して、あえて「いや、そうじゃない」と反発する性質が強調されます。

語構造の分析
この言葉は、「へそ(臍)」+「曲がり」という語から構成されています。

  • 「へそ」はお腹の中央にある臓器の跡であり、身体の「中心」や「核」を象徴する言葉です。
  • 「曲がり」は文字通り「まっすぐでない」「ねじれている」ことを意味します。
    したがって「へそが曲がる=中心がまっすぐでない」という比喩から、「心(あるいは意志・態度)が素直でなくねじれている」状態を指す言葉になります。

英語訳との構造比較
英語で似た意味を持つ言葉としては “contrarian”, “stubborn”, “hard‑to‑please” などがありますが、完全に一致するわけではありません。

  • “contrarian” は「反対意見を取る人」という意味で、まさに「他の人とは逆の立場を取る」という点で近いです。
  • “stubborn” は「頑固な」という意味で、自分の考えを変えないというニュアンスが強く、“他人に逆らいたい”という動機や居心地悪さまでは含まれません。
    つまり、「へそ曲がり」は “contrarian” に近いですが、さらに「他人の期待・社会の流れ・多数派の意見にあえて逆らいたい」という動機が含まれ、「stubborn」よりも“反発”の意図が明確です。

似ているが異なる英語表現との比較

  • “rebel”:こちらは「反抗者」「規則や権威に挑む人」という強めのニュアンスがあり、へそ曲がりが必ずしもそれほど強い反抗ではない点で違います。
  • “maverick”:独自路線を行く人、という意味でポジティブにも使われますが、「わざと人と違うことを言う」「反発するために反発する」ほどのニュアンスは含まれにくいです。
    よって、「へそ曲がり」は上記の表現とも微妙に異なり、「協調を求められる場にあって、自ら逆を選ぶ」という日本語文化の特性が反映されています。

文化的・社会的意味の翻訳
日本社会では「和」「協調」「空気を読む」といった価値観が重視されます。そんな中で「へそ曲がり」という言葉は、「その流れに乗らず、あえて逆を選ぶ人」「常識や期待から外れる人」というニュアンスを帯びています。英語で訳す際には、ただ “someone who always disagrees” とするだけではその “あえて” 感、心の「ねじれ」感や「中心が歪んでいる」比喩が伝わりません。したがって、「someone who deliberately takes the opposite side because they don’t want to follow the usual flow」など、補足的な説明が必要になります

解説補足:「へそ曲がり」と「天邪鬼」の関係

「へそ曲がり」と非常に近い概念に 「天邪鬼(あまのじゃく)」 という言葉があります。これは元々、日本の民間伝承に登場する小鬼の名前で、常に人に逆らったり、反対のことを言ったりする性格を象徴する存在です。

「天邪鬼」とは?

「天(あま)」+「邪」+「鬼」で構成され、文字通り「天の意に逆らう邪な鬼」という意味になります。

このキャラクターは、たとえば「こっちを向くなよ」と言えばそちらを向く、「やるな」と言えばやる、というように、命令や期待とは真逆の行動をとる性質を持ちます。

「へそ曲がり」との違い

  • 「天邪鬼」 は、より神話的・性格的な性質を指す語で、生まれつきそういう性質を持っているような印象があります。
  • 一方 「へそ曲がり」 は、日常的に「この人、あまのじゃくだな」といった具合で使われ、態度や行動として表出している状態を指すことが多いです。

つまり、「天邪鬼」はより根源的・性格的なレベルで、人の気持ちにあえて逆らう存在を示し、「へそ曲がり」はその天邪鬼的な性質が行動に表れたものとも言えます。

英語での表現との比較

  • “contrarian” や “difficult on purpose” のような表現は、「へそ曲がり」や「天邪鬼」の両方をある程度カバーできますが、「あまのじゃく」の神話的・根本的性格まで表すには補足が必要です。
  • たとえば: “He’s a real ama-no-jaku—he does the opposite of whatever you tell him, just because.”
    (まさに天邪鬼ってやつだよ。何を言っても、あえて逆のことをするんだから。)

例文①

He always says the opposite of what people expect—just to be difficult.

(彼はいつも、ただ人を困らせたいからって理由だけで、みんなの期待と逆のことを言うんだ。)


例文②

Even when he agrees deep down, he picks a fight just to go against the flow.

(内心では賛成していても、流れに逆らいたい一心で、あえて反論するんだ。)


例文③

She's the kind of person who crosses the street just because you told her not to.

(彼女は「渡るな」と言われたら、あえて横断するような人だよ。)

※これは「天邪鬼」的な性格を意訳でユーモラスに表した言い回しです。


例文④

He’s a classic contrarian—always playing devil’s advocate even when there’s no need.

(彼はいわゆる“コントラリアン”で、必要もないのにいつも反対側に回ってくるんだ。)

「へそ曲がり」を英語で説明する

Someone who deliberately takes the opposite side even if they actually agree with what people are saying, simply because they don’t want to follow the usual flow.
(「人が言っていることに実は賛成していても、ただ普通の流れに乗りたくないからあえて逆の立場を取る人」)

日本語訳:

たとえ内心では人の意見に賛成していても、普段の流れにあえて逆らおうとして逆の側を選ぶ人。


JLPTの目安レベル

N2〜N1
※日本語能力試験(JLPT)では、出題語彙の公式リストは公開されていません。このレベル表示は、実際の試験問題や教材に基づいた目安として記載しています。

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