
ヒロシとエミリーは大学帰りにカフェで話しています。
ヒロシは少しため息をついて、「またあの後輩が…」とスマホの画面を見つめています。
エミリーはクリームソーダをすくいながら、ヒロシの表情を気にしています。
エミリー:ねえ、ヒロシ、どうしたの?さっきからため息ばかりして。
ヒロシ:ああ、実はさ、僕の友人のタカシが遅刻ばかりしてるんだ。
エミリー:遅刻ばかり…その「ばかり」って、日本語で良くでてくるよね。「ばっかり」って言うこともあるし、ちょっと気になってたの。
ヒロシ:そうだね「ばかり」は、「そのことだけが続いている」「そのことに偏っている」って感じかな。タカシの場合は「遅刻ばかり=遅刻することが多くて他の行動が目立たない」っていう意味で使ってる。
エミリー:なるほど。他にも「甘いものばかり食べてる」「行ったばかり」なんて言い方もあるよね。それらも「ばかり」だけど、微妙に意味が違う気がする。
ヒロシ:うん、まさに。例えば「甘いものばかり」だと「甘いものばかり食べてる=そればかり食べてる=他のものをあまり食べていない」ってニュアンス。「行ったばかり」は「ちょうど行ったばかり=その行ったという動作から時間があまり経っていない」って意味になる。
エミリー:だから英語にするときも、同じ「ばかり」でも訳し方が変わるんだね。「常に」「always」とか安易に使うとズレちゃう。
ヒロシ:そうそう。僕らが「He is always late」と言いたいとき、「遅刻ばかりしている」から「always」を直ちに思いつくかもしれないけど、「遅刻ばかり=何度もしているけど、必ずいつもではない」「他のこともしてるかもしれないが遅刻が多い」というニュアンスを含んでいるから、どう訳すか慎重になったほうがいい。
エミリー:英語の教科書に「ばかり」のこの種の使い分け、載ってるのかな?
ヒロシ:僕も調べてみたんだけど、「だけ」「only」など似た表現は出てくるけど、「ばかり」そのものを細かく分けて説明してることって少ないように感じる。
エミリー:ふむ、それなら「ばかり」の文法的な分類をちゃんと整理して、どう英語に対応させるか一緒に考えようか。
ヒロシ:いいね。それやろう。
解説:「ばかり/ばっかり」という言葉について
今日の話題、「ばかり/ばっかり」を文法的に分類し、それぞれの意味や使い方を整理します。
また、英語に訳す際にどのような対応が可能かも併せて述べます。
文法的な分類
言語資料によれば、以下のような主要な用法(文型)があります。 日本語教育ナビ+3日本語教師のN1et+3cotohajime.net+3
- 「たばかりだ」型:動作・出来事がちょうど終わったばかり
- 接続:動詞タ形+ばかりだ/たばかりだ 例:先月日本に来たばかりです。 cotohajime.net+1
- 意味:「…した直後で、時間があまり経っていない」という話者の心理的印象。 cotohajime.net+1
- 英語の近似訳例:“just did …”, “have just …”
- 「~ばかり(している)」型:ある動作・状態が繰り返されている/他があまりない
- 接続:名詞+ばかり、動詞て形+ばかり(で/いる) 例:ゲームをしてばかりいる。 にほんご部+2sansyo-bunpo.net+2
- 意味:「…ばかりして/…ばかりだ=そればかりが目立つ/他のことがあまりない」というニュアンス。 日本語教育ナビ+1
- 英語の近似訳例:“do nothing but …”, “only …”, “keep …ing”
- 「~ばかりだ」型:変化・進行中の傾向を表す
- 接続:動詞辞書形+ばかりだ 例:体重は増えるばかりだ。 日本語教師のN1et+1
- 意味:「どんどん…の状態になっていく」「悪い方向に進んでいる」という印象を伴うことが多い。
- 英語の近似訳例:“be getting worse and worse”, “just keeps …”
- 「数量詞+ばかり」型:だいたい~くらい、数量の大体を表す
- 接続:数量詞+ばかり 例:3日ばかりかかった。 エデワカル+1
- 意味:「おおよそそのくらい」「だいたい…」という意味。
- 英語の近似訳例:“about …”, “roughly …”
- 「…ばかりで/…ばかりか」型:他がない・他もある/累加
- 接続:「AばかりでB」 例:この仕事は忙しいばかりで給料がよくない。 エデワカル+1
- 意味:「ただAだけでBだ/Aだけであって他の良いものがない」や「AばかりかBまで…」という累加・加算の意味。
- 英語の近似訳例:“nothing but A and …”, “not only A but even B …”
例文
1. 「たばかり」型:動作が終わった直後
- 日本語例文:
先月、日本に来たばかりです。 - 英語例文:
I just came to Japan last month.
I’ve only been in Japan for a month.
※どちらも「来たばかり」を自然な英語で再現しています。後者は「来てからあまり時間が経っていない」というニュアンスがより明確。
2. 「~ばかり(している)」型:繰り返し・偏り
- 日本語例文:
彼はゲームばかりしている。 - 英語例文:
He does nothing but play video games.
He’s always playing video games.
All he ever does is play games.
※「ばかり」は単に “only” より強く、他のことをしていない印象を伝えるには “nothing but…” や “all he ever does is…” が効果的です。
3. 「~ばかりだ」型:変化が一方向に進んでいる
- 日本語例文:
体重は増えるばかりだ。 - 英語例文:
I just keep gaining weight.
My weight keeps going up.
※“keep ~ing” や “keeps going up” は、悪化・継続のニュアンスを自然に表現します。
4. 「数量詞+ばかり」型:大体の数量
- 日本語例文:
3日ばかりかかった。 - 英語例文:
It took about three days.
It took roughly three days.
※「ばかり」は “about” や “roughly” にあたりますが、語感は少し丁寧でやわらかい印象です。
5. 「ばかりで/ばかりか」型:限定または累加
- 日本語例文(限定):
この仕事は忙しいばかりで、給料がよくない。 - 英語例文:
This job is nothing but busy, and the pay is terrible.
This job is just busy all the time, and it doesn’t pay well. - 日本語例文(累加):
彼は日本語ばかりか、中国語も話せる。 - 英語例文:
Not only can he speak Japanese, but he also speaks Chinese.
He can speak not just Japanese, but also Chinese.
英語訳との構造比較
「ばかり」は文脈によって様々な英語訳が可能ですが、その中で英語の教科書に一般的に出る構文と比べると、次のような点が特徴的です。
- 英語では「only」「just」「keep …ing」「nothing but …」など複数の語・構文で日本語「ばかり」のニュアンスをカバーします。
- 日本語「ばかり」が「そのことだけ・そればかり/他のことが少ない」という話者の主観・偏り・繰り返しのニュアンスを含むことが多いのに対し、英語の “only” や “just” は必ずしも「繰り返し」や「偏り」の意味を伴わないことがあります。
- 例えば「遅刻ばかりしている」→ “He is always late” と訳すと、「ほぼ常に」という強い意味になってしまう可能性があり、元の日本語が言いたい「遅刻することが多い/他の時間もあるかもしれないが遅刻が目立つ」というニュアンスが薄れるかもしれません。
- そのため英語訳では “He keeps being late” や “He does nothing but arrive late” など、繰り返し・偏り・他をあまりしていないというニュアンスを明示するほうが近くなります。
文化的・社会的意味の翻訳
「ばかり」は単に「only/just…」という意味を超えて、日本語特有の「偏り・繰り返し・あきれ感・批判的視点」を含むことがあります。例えば「甘いものばかり食べてる」は、「甘いものしか食べてない」よりも「甘いものばっかり=他のもの全然食べてなくて、そろそろまずいよね」という話者の感情が色濃く出ます。 日本語教育ナビ+1
英語に訳す際、この感情的な色=「うんざりしている」「他がない」というニュアンス」をそのまま訳すには、単に “only sweets” では弱く、 “He eats nothing but sweets” や “He keeps eating sweets all the time” など、話者の感情・状況を含んだ訳にすることが望ましいです。
「ばかり/ばっかり」を英語で説明する
This Japanese particle “ばかり” (informal: “ばっかり”) carries several related but distinct meanings such as “only,” “just,” “nothing but,” “just did something,” or “being stuck in some state,” depending on context. It often implies a sense of repetition or bias (something happens frequently or one thing dominates) rather than a strict exclusive limit.
In other words:
“It’s not that nothing else ever happens, but this one thing keeps happening (or dominates) and the speaker is aware of that.”
日本語訳:
この日本語の助詞「ばかり」(くだけた口語では「ばっかり」)は、「~だけ」「ちょうど~したばかり」「~ばかりしている」というように、文脈により「〜ばかり/~ばっかり」の意味が変化します。特に「何度もそればかり」「それが目立っている/他があまりない」という繰り返しや偏りを表すニュアンスを伴うことが多いです。
JLPTの目安レベル
N4〜N2あたりの文法項目として扱われることが多いです。※日本語能力試験(JLPT)では、出題語彙や文法の公式リストは公開されていません。このレベル表示は、実際の試験問題や教材に基づいた目安として記載しています。
たとえば、数量詞+ばかり/てばかりいる 等は N4 レベルで扱われることがあります。 日本語NET - 教案や授業のアイデアについて+1 より高度な形(~ばかりだ、~ばかりに等)は N2 レベルで整理されることがあります。
















