
週末の学園祭。ヒロシとエミリーは同じサークルの屋台で焼きそばを売っていた。夕方、祭りの熱気も冷め、店じまいの時間がやってくる。ヒロシは油の飛んだ鉄板を持ち上げながら、大きくため息をついた。エミリーは段ボールをまとめながら、そっとヒロシの様子を見ている。
ヒロシふぅ〜、あとは屋台の「後始末」だけか。ここからが地味に大変なんだよな。
エミリー「後始末」って、今の作業のこと?
ヒロシうん、まあ片付けとか、掃除とか…いろいろ終わった後のまとめって感じ?
エミリーなるほど、ただの clean-up より、ちょっと重そうな響きだね。
ヒロシそうだね。なんか、「けじめ」みたいな意味もある気がする。
エミリーたとえば、イベントの後だけじゃなくて、人間関係とかでも使える?
ヒロシうん、たとえば誰かが問題起こしたとき、「後始末よろしく」とか言うよ。
エミリーへぇ…それって、その人の代わりに問題を処理するってこと?
ヒロシそうそう。責任取ったり、なんか、後のこと全部引き受ける感じ。
エミリー面白い言葉だね。英語には、それにピッタリくる表現、あんまりないかも。
ヒロシ英語だと何て言うの?clean-upとは違うんだよね?
エミリーたぶん "deal with the consequences" とか "handle the fallout" が近いかな。でもちょっと冷たい印象もある。
ヒロシ「後始末」は、もっと人情とか、責任感とか入ってる気がするな。
エミリーうん、そういう文化の違いが、日本語って面白いところだよね。ちゃんと覚えておく!
解説:「後始末」という言葉について
「後始末(あとしまつ)」とは、文字通り「後(あと)」=何かが終わったあと、「始末」=物事の収拾・整理を意味します。つまり「後始末」とは、出来事や行動のあとに生じた結果・残りを、きちんと整理し処理することを表す言葉です。
この語は単なる物理的な「片付け」だけではなく、そこに伴う責任・気配り・感情の整理までを含むのが特徴です。たとえばイベントの清掃、人のミスの処理、失敗の後処理、人間関係のしこりを解く作業など、すべて「後始末」と表現できます。
「後始末」は、「誰が」「何に対して」「どう整理し、責任を取るのか」という構造を持った言葉です。
英語での近似表現:「deal with the consequences」
この日本語に対して、最も構造的に近い英語表現は “deal with the consequences” です。この表現は、「結果(consequences)」という出来事の後に残るものを、「向き合い処理する(deal with)」という動詞で受け止めており、まさに「後始末」の構造と感情の重さに対応しています。
ただし、英語の “consequences” は通常、「悪い結果・不快な影響」という意味で使われることが多いため、ニュアンスとしては「面倒な事態に責任をもって対応する」といった意味合いが強調されます。これが、日本語の「けじめをつける」「後を濁さない」などの文化的感覚と重なる部分です。
他の表現との比較:
- clean up the mess:物理的な片付けには近いが、責任や感情的整理までは含まれない。
- handle the aftermath:事後の余波や混乱を処理する意味では近いが、日常的な後始末にはやや大げさ。
- take responsibility for what happened:責任を引き受けるという点では本質的に近いが、「整理し終える」という動作性が不足している。
例文:
- 彼が辞めた後の後始末を全部私がやることになった。
I had to deal with the consequences of his resignation. - 失敗しても、きちんと後始末をするのが大人だと思う。
Even if you make a mistake, I think it’s important to take responsibility and clean things up properly.
このように、「後始末」は単なる「片付け」ではなく、「出来事のあとを責任もって整える」行為を表します。日本語独特の感覚を、英語では場面に応じて複数の表現で補いながら訳す必要があります。
「後始末」を英語で説明する
The Japanese word “後始末 (atoshimatsu)” refers to handling everything that remains after something is finished—whether it’s physical cleaning, emotional closure, or taking responsibility for unresolved matters. It’s more than just tidying up; it implies a moral or social duty to properly conclude what has happened, often with care and accountability.
「後始末(あとしまつ)」とは、物事が終わったあとに残る事柄をきちんと整理する行為を指します。これは単なる片付けにとどまらず、責任や気持ちの整理、社会的なけじめなども含む、日本独特の感覚があります。英語では “deal with the consequences,” “handle the aftermath,” “clean up the mess” などの表現が状況によって近い意味になります。
JLPTの目安レベル
N2レベル
※日本語能力試験(JLPT)では、出題語彙の公式リストは公開されていません。このレベル表示は、実際の試験問題や教材に基づいた目安として記載しています。