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「にくい」を英語で説明できる?ネガティブとポジティブの分かれ道

週末の午後、エミリーとヒロシは、駅前のカフェでお茶をしていた。ヒロシは、ちょうど昨日が誕生日だったらしく、うれしそうに新しいバッグを持っていた。見るからに高級そうで、しかもヒロシの雰囲気にぴったりなデザイン。エミリーがそれに気づくと、ヒロシは得意げにこう言った。

「これ、友だちからのプレゼントなんだけどさ、ほんと毎回にくいことしてくるんだよ!」

すると、エミリーの顔が「?」となる――。「にくい」って、悪い意味じゃないの?
日本語の不思議にまたひとつ、出会うことになった。


ヒロシ: 見て見て、このバッグ!やばくない?めっちゃ気に入ってんだよね〜。

エミリー: おー、オシャレじゃん!なんかヒロシっぽい。黒でシンプルだけど、ちょっと個性ある感じ。

ヒロシ: そうそう、それ!まさにそれが好きなのよ。てか、これ友だちからの誕生日プレゼントなんだよ。

エミリー: えっ、そうなの!?すごっ、その友だちセンス良すぎ!

ヒロシ: いやほんとに。オレの好み、完ッ全に把握してるんよ。毎回「にくい」ことしてくれるんだよな〜。

エミリー: ……え?にくい?なんで?その友だち、なんか悪いことした?

ヒロシ: ははっ!そこ引っかかるよね〜。ちがうちがう、憎むとかの「にくい」じゃなくて、感心する方の意味!

エミリー: 感心する方?そんな意味もあるんだ、「にくい」に?

ヒロシ: あるんだよ〜。「やるな〜」とか「絶妙すぎ!」ってときに、「にくい!」って言うんだよ。

エミリー: へえ〜、おもしろい。英語だと「憎い」っていう意味なら、I hate him とか I can't forgive him みたいに言うよ。

ヒロシ: あー、やっぱそれくらい強い意味になるんだ。

エミリー: うん。でも感心する方の「にくい」はちょっと難しいけど、たとえば、That’s impressively clever とか、What a brilliant move って言えば、似たニュアンスになるかも。

ヒロシ: ほぉ〜、なんか英語でも「くやしいけどスゴい」って感じ出せるんだね。

エミリー: うん、あとね、He knows just how to impress とかも近いと思う。相手がどうしたら喜ぶかわかってて、それを完璧にやるって意味。

ヒロシ: あー、まさにそういう友だちだわ。プレゼントのチョイスとか、タイミングとか、ほんと絶妙なんよ。

エミリー: なるほどね〜。でも同じ言葉で、正反対の意味があるのって、ほんとむずかしい。日本語こわい(笑)

解説

にくい(憎い)

「にくい(憎い)」は、文脈によって正反対の意味になる、とてもユニークな言葉です。

【ポジティブな意味】感心する、見事だと思う「にくい」

この「にくい」は、相手の行動やセンスが絶妙すぎて感心する、うますぎてちょっと悔しいけど褒めずにはいられない、そんなときに使われる表現です。
たとえば「にくい演出」「にくいプレゼント」など、センスやタイミングに唸ってしまうような場面で使われます。

英語には完全に一致する単語はありませんが、以下のような表現が近いニュアンスを持っています。


That’s impressively clever.
すごく賢い、見事なやり方だね。

例文:He picked the perfect gift for her again? That’s impressively clever.
 また彼女にぴったりのプレゼント選んだの?ほんと、にくいねえ。


What a brilliant move.
見事な一手だ、うまいことやったな〜。

例文:He waited until the last minute to speak and totally stole the spotlight. What a brilliant move.
 最後の最後で発言して、注目を全部持ってったよ。にくい演出だったな〜。


He knows just how to impress.
人を感心させる方法を知ってるね。

例文:He gave her a book she mentioned once months ago. He knows just how to impress.
 何ヶ月も前にちょっと言っただけの本をプレゼントしたんだって。ほんと、にくいね。


このような使い方でも、漢字は**「憎い」**と書きますが、意味は全く逆なので、文脈から判断することが大切です。


【ネガティブな意味】憎む・嫌う「にくい」

こちらは本来の意味で、怒りや嫌悪の感情を表す言葉です。
相手に対して強い反感を持ったときに使われます。

例文:私は彼の裏切りが憎い。
(I hate his betrayal.)

この場合の英語表現は:

I hate 〜.(〜が憎い)
I can’t forgive 〜.(〜を許せない)

「にくい」を英語で説明する

The word "nikui" in Japanese is a great example of how one word can carry opposite meanings depending on the context.
On one hand, it can express negative feelings like hatred or resentment, as in "I hate him" or "I can’t forgive him." On the other hand, it can also be used positively, to describe something impressively clever, thoughtful, or skillfully done—something so well-executed that it feels almost frustrating in its perfection.

For example, when someone gives a perfectly timed, thoughtful gift, you might say in Japanese, “にくいことするな〜,” which actually means “That’s clever” or “You’ve really impressed me.”

This dual use of the same word highlights how deeply context shapes meaning in Japanese. It can be especially confusing for language learners, because the written form "憎い" is used in both cases, despite the opposite emotional tone.


「にくい(憎い)」は日本語能力試験(JLPT)N2に該当します。
※日本語能力試験(JLPT)では、出題語彙の公式リストは公開されていません。このレベル表示は、実際の試験問題や教材に基づいた目安として記載しています。

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