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試験も「受ける」、ギャグも「ウケる」――英語にすると見えてくる「反応」の違い

ヒロシ:お、今日のはウケた(笑)。

エミリー:あ、今日は「すべった」じゃないんだ(笑)。

ヒロシ:そうそう。この前は

けど、今日はちゃんとウケた。

エミリー:そういえば、その「ウケる」って漢字ではどう書くの?

ヒロシ:「受ける」だよ。

エミリー:「試験を受ける」の「受ける」?

ヒロシ:うん。同じ漢字。

エミリー:「授業を受ける」も?

ヒロシ:それも「受ける」。

エミリー:試験も授業も受けるし、ギャグも受けるんだ。

ヒロシ:並べると、なんか変だな(笑)。でも「ギャグがウケる」は普通に言うよ。

エミリー:この場合は、みんなが笑ったから「ウケた」ってことだよね。

ヒロシ:そう。でも笑いだけじゃないよ。「この商品、若者にウケそう」とかも言う。

エミリー:それは笑うってことじゃないよね?

ヒロシ:うん。「人気が出そう」とか「気に入ってもらえそう」って感じ。

エミリー:じゃあ、「ウケる」って、相手からいい反応があるときに使えるんだ。

ヒロシ:そう考えると、そうだな。「ウケがいい」とか「ウケを狙う」とかも言うし。

エミリー:「ウケ狙い」って、みんなに笑ってもらうために、わざと面白いことをする感じ?

ヒロシ:そうそう。たとえばこの前、田中がシュート一本も入らなかったのに、「今日は逆に俺がMVPだな」って言っててさ。あれは完全にウケ狙いだったと思う。

エミリー:何それ、ウケる(笑)。

ヒロシ:ほら、今の。

エミリー:え?

ヒロシ:エミリーも「ウケる」って言った。

エミリー:あ、本当だ(笑)。

ヒロシ:でも今のは、「みんなにウケる」ともちょっと違うよな。エミリー自身が「面白い」って言ってる。

エミリー:そうだね。私は今、「それ面白い」っていう感じで言った。

ヒロシ:「ギャグがウケる」「若者にウケる」「それウケる!」。同じ言葉なのに、少しずつ違うんだな。

エミリー:でも、どれも「反応」と関係してるように見えるね。笑ったり、気に入ったり、面白いと感じたり。

ヒロシ:なるほど。「受ける」って漢字ばっかり気になったけど、そっちを見るほうが分かりやすいかも。

エミリー:それに、この前の「すべる」ともつながってるよね。

ヒロシ:ああ。笑わせようとしてウケれば成功。笑いが返ってこなかったら、すべる。

エミリー:英語でも、この前話した The joke didn't land. の反対なら、The joke landed. って言えるよ。

ヒロシ:でも「この商品は若者に land する」とは言わない?

エミリー:少なくとも私はそうは言わないかな。その場合なら It's popular with younger people. とか、何が起きているかで言い方を変えると思う。

ヒロシ:じゃあ日本語では、「ウケる」がけっこう広い範囲を担当してるんだな。

エミリー:そうみたい。笑いだけじゃなくて、「相手がどう反応したか」をいろいろ表してる。

ヒロシ:試験を受ける、授業を受ける、影響を受ける、ギャグがウケる、若者にウケる、それウケる……。

エミリー:日本語の「受ける」、忙しいね(笑)。

ヒロシ:それ、ちょっとウケ狙いだろ(笑)。

エミリー:ウケた?

ヒロシ:……まあまあ(笑)。

解説:「ウケる」という言葉について

「ウケる」は、漢字では「受ける」と書かれます。「受ける」は非常に意味の広い日本語で、「ボールを受ける」「試験を受ける」「授業を受ける」「影響を受ける」など、さまざまな場面で使われます。

今回扱う「ウケる」は、その中でも人から反応を得る、評判になる、人気を得るという意味につながる用法です。

たとえば、

「そのギャグはウケた」

であれば、周囲から笑いという好意的な反応が起こったことを表します。

一方、

「この商品は若者にウケている」

なら、若者がその商品を笑っているわけではありません。「若者から好意的に受け入れられている」「人気がある」という意味になります。

さらに現在のくだけた会話では、

「それ、ウケる!」
「え、ウケる〜」

のような使い方もあります。

この場合は、誰かから人気を得たことを客観的に説明しているというより、話者自身の「面白い」「笑える」という反応に近くなります。

したがって、「ウケる」を理解するときには、「受けるとは何を受けることなのか」だけを考えるより、その場でどのような反応が起きているのかを見るほうが、現代のさまざまな用法を捉えやすくなります。

語構造の分析

「ウケる」のもとにある「受ける」は、もともと非常に多くの意味を持つ動詞です。

物理的には「ボールを受ける」のように、こちらへ向かってくるものを受け止めることを表します。その一方で、「試験を受ける」「授業を受ける」「影響を受ける」のように、物を手で受け取るわけではない場面にも広く使われています。

そして「受ける」には、芝居などが観客に喜ばれる、よい評判や人気を得るという用法もあります。

『精選版 日本国語大辞典』では、観客側が芝居などを喜び喝采する意味の「受ける」に1810年の用例があり、さらに芝居などが見物人に喜ばれて評判や人気を得る自動詞用法について、江戸後期に生じたと説明されています。

また名詞の「受け」にも、「相手の動作や働きかけに反応を示すこと」や「世間の評判・反響・人気」という意味があります。

ここで注意したいのは、「受ける」という漢字から、

「笑いを受け取るから『ウケる』になった」

などと単純な語源を作らないことです。

現在確認できる辞書・語誌からは、「受ける」「受け」という言葉が、少なくとも長い間、観客の反応・評判・人気と結びついて使われてきたことが分かります。

「ウケる」が表す反応

現代の「ウケる」を並べてみると、同じ言葉の中に少しずつ異なる反応があります。

「ギャグがウケる」
→ 笑いが起こります。

「若者にウケる」
→ 好意的に受け入れられたり、人気を得たりします。

「ウケがいい」
→ 周囲からの反応や評判がよいことを表します。

「ウケを狙う」
→ 笑いや好反応を意識して、発言や行動をします。

「それウケる!」
→ 話者自身が、その場で「面白い」「笑える」と反応しています。

このように見ると、「ウケる」は単純に「笑う」という意味だけではありません。

人が何かに対して示す反応、とりわけ好意的な反応が、さまざまな形で「ウケる」という言葉の周辺に現れています。

英語訳との構造比較

「ウケる」を英語にするときには、一つの英単語ですべてを表そうとすると難しくなります。

たとえば、

That's funny!
「それ、ウケる!/それ面白い!」

That's hilarious!
「それ、めちゃくちゃウケる!」

のように、その場で面白いと感じた反応なら funnyhilarious が自然です。

実際に大笑いしたことを表すなら、

That cracked me up.
「それ、めちゃくちゃ笑った/ウケた。」

とも言えます。

一方、ジョークが観客から狙った反応を得たのであれば、

The joke landed.
「そのジョークはウケた。」

The joke got a big laugh.
「そのジョークは大きな笑いを取った。」

などが使えます。

さらに、

The new design is popular with younger people.
「新しいデザインは若い人たちにウケています。」

となれば、英語では popular を使ったほうが自然です。

日本語では「ウケる」という一つの言葉でつながって見える場面が、英語では funny / hilarious / land / get a laugh / be popular など、その場で起きている反応によって分かれていきます。

近いが異なる英語表現との比較

funny は、「それウケる!」のような、その場で何かを面白いと感じる用法には近い表現です。しかし、「この商品は若者にウケる」という人気・好評の意味には使えません。

land は、ジョークや発言が狙った効果をうまく生んだ場面で使われます。「ジョークがウケた」には近いものの、「子どもにウケるキャラクター」のような一般的な人気まで land で表すことはできません。

go over well は、発言、提案、パフォーマンスなどが好意的に受け止められた場合に使えます。

The idea went over well with the audience.
「そのアイデアは観客に好評でした/ウケがよかったです。」

「相手からよい反応を得た」という点では「ウケる」にかなり近い表現ですが、「それウケる!」という瞬間的な笑いの反応とは異なります。

be popular with は、「若者にウケる」「子どもにウケる」のような人気を表すには自然ですが、「笑いを取る」という意味は含まれません。

そのため、「ウケる」を英語にするときには、

誰が、何に対して、どのような反応をしているのか

を見て、英語表現を選ぶ必要があります。

「ウケる」と「すべる」

笑いを狙った場面では、「ウケる」と「すべる」は対になるように使われることがあります。

誰かが笑わせようとして、期待した笑いが起これば「ウケる」。期待した反応が起こらなければ「すべる」と表現できます。

前回扱った「すべる」には、

笑わせようとする → 笑いを期待する → 期待した反応が起こらない

という構造がありました。

今回の「ウケる」は、その反対側から、

何かをする → 相手から笑いや好意的な反応が起こる

という場面を見ることができます。

英語でも、ジョークについて The joke didn't land.The joke landed. を対にして考えられる場合があります。

ただし、「ウケる」と「すべる」が完全な反対語というわけではありません。

「この商品は若者にウケる」「この映画は海外でウケた」のような場合、「ウケる」は笑いではなく、人気や好評を表しています。この意味まで含めて「すべる」と対になるわけではありません。

文化的・社会的意味の翻訳

「ウケる」が表す感情や反応そのものは、日本語にしか存在しないものではありません。

冗談を聞いて笑う。観客がパフォーマンスを気に入る。ある商品が特定の世代から人気を得る。友人の話を聞いて「面白い!」と反応する。

こうした経験は、言語に関係なく存在します。

興味深いのは、同じような反応を、言語がどのようにまとめ、どのように分けて表現するかです。

日本語では「受ける」という言葉が、評判や観客の反応を表すところまで意味を広げ、「ウケがいい」「ウケ狙い」「ギャグがウケる」、そしてくだけた「それウケる!」にも使われています。

英語では、同じ場面を funnylandget a laughgo over wellbe popular など、状況に応じて異なる表現で組み立てることがあります。

そのため、「ウケる」を英語にすることは、「受ける」に対応する英単語を探すことではありません。

その場でどんな反応が起きているのかを見て、その景色を英語で組み直すことになります。

「ウケる」を英語で説明する

“Ukeru” comes from the Japanese verb “ukeru,” meaning “to receive,” but it has developed several uses related to people's reactions. A joke can “ukeru” when it gets laughs, while a product, movie, or character can “ukeru” with a certain group when it is popular or well received. In very casual conversation, people also say “Ukeru!” as an immediate reaction to something funny, much like “That's funny!” or “That's hilarious!” in English. Because these uses describe different kinds of reactions, there is no single English word that works for every case.

「ウケる」は、「受ける」という日本語の動詞につながる言葉ですが、人の反応に関係するいくつかの使い方へと広がっています。ジョークが笑いを取れば「ウケる」と言えますし、商品、映画、キャラクターなどが特定の人々から人気を得たり好意的に受け入れられたりした場合にも「ウケる」と言えます。また、とてもくだけた会話では、何かを面白いと感じた瞬間の反応として「ウケる!」と言うこともあり、英語の That's funny!That's hilarious! に近くなります。このように異なる種類の反応を表すため、すべての「ウケる」に使える一つの英単語はありません。

JLPTの目安レベル

目安:N2程度

「受ける」という動詞そのものは基本的な日本語ですが、「評判がよい・人気を得る」という意味や、「ウケがいい」「ウケ狙い」、さらに口語的な「ウケる!」まで理解するには、実際の会話や文脈についての知識も必要になります。

また、「ウケる」のようにカタカナで書かれていても、この場合は英語由来の外来語ではなく、日本語の「受ける」とつながる表記です。

※日本語能力試験(JLPT)では、出題語彙の公式リストは公開されていません。このレベル表示は、実際の試験問題や教材に基づいた目安として記載しています。

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