
ある日の昼休み、ヒロシとエミリーは大学のカフェテリアで昼ご飯を食べていた。ヒロシは最近、余計な一言を言ってしまい、それが原因で友達に怒られてしまったという。そんな話の中で「ヤブヘビ」という表現がぴったりだと思い、エミリーに説明することにした。
ヒロシ: あー、やっちゃったよ…。余計なこと言わなきゃよかった…。
エミリー: え、どうしたの?
ヒロシ: 昨日、佐藤と一緒に授業に行く途中で、ちょうど吉田とすれ違ったんだよ。そしたら佐藤が「なんか吉田、元気ないな」ってポツリと言ったんだ。
エミリー: ふんふん。
ヒロシ: で、俺、つい「吉田、バイトも増えたし、彼女とも最近うまくいってないらしいよ」って言っちゃったんだよ。
エミリー: えっ、それ吉田から直接聞いた話だったの?
ヒロシ: いや、共通の友達から聞いた話。でも、その場では深く考えずに言っちゃってさ…。
エミリー: それでどうなったの?
ヒロシ: そしたら、今日の朝、吉田に「お前、俺のことベラベラ話してたらしいな?」って言われて…。どうやら佐藤が他の友達に「吉田、彼女とうまくいってないらしいよ」って話しちゃったみたいで、そこから吉田の耳に入っちゃったらしい…。
エミリー: ええっ! じゃあ、ヒロシのちょっとした一言が広まっちゃったんだ…。
ヒロシ: そう! 俺、別に吉田を悪く言うつもりなんて全然なかったのに、結果的に俺が噂を広めたみたいになっちゃって…。完全に「ヤブヘビ」だったわ。
エミリー: なるほど! 「頼まれてもないのに余計なことを言って、自分で問題を大きくしちゃう」 ってことか。
ヒロシ: そう! 佐藤はただ「元気ないな」って言っただけなのに、俺が余計なことを言ったせいで、吉田は怒るし、佐藤も気まずくなるし…。何もしなければ問題はなかったのに、俺のせいで余計なトラブルが起きちゃった。
エミリー: わかる気がする! でも、「ヤブヘビ」の「ヤブ」って何?
ヒロシ: 「ヤブ」っていうのは「藪(やぶ)」、つまり草や木が生い茂ってる場所のこと。で、「ヘビ」はそのまま蛇のことだよ。だから「藪をつついたら、蛇が出てくる」って意味なんだ。
エミリー: えっ、それってつまり、「何もしなければ蛇は出てこなかったのに、わざわざ藪をつついたから蛇が出てきた」ってこと?
ヒロシ: そう! 何もしなければ平和だったのに、余計なことをしたせいで問題が発生しちゃう、みたいな感じ。
エミリー: なるほどね。英語だと “let sleeping dogs lie” にちょっと近いかも。「眠っている犬はそのままにしろ」って意味で、わざわざ問題を起こさないようにする、みたいなニュアンス。
ヒロシ: あー、それは「問題を起こさないようにする」ってことか。「ヤブヘビ」は「自分で問題を作っちゃう」って意味だから、ちょっと違うかもね。
エミリー: たしかに。でも、似てるところもあるね。
ヒロシ: そうだね。あ、ちなみに「ヤブ」がつく言葉って他にもあって、「藪から棒(やぶからぼう)」っていう言葉もあるんだよ。これは「突然」って意味で、藪の中から急に棒が出てくるみたいなイメージだね。
エミリー: へえ、どうやって使うの?
ヒロシ: 例えば、「昨日、佐藤が急に『引っ越すことにした』って言い出してびっくりしたよ。」って言いたいときに、「佐藤が藪から棒に『引っ越すことにした』って言い出してびっくりした。」みたいに使うんだ。
エミリー: なるほどね。それは英語で言うと “out of the blue” かな。「突然」って意味だから、例えば “He asked me a strange question out of the blue.”(彼は突然変な質問をしてきた) みたいに使えるよ。
ヒロシ: へえ、そう言うんだ。じゃあ、「ヤブヘビにならないように気をつけるよ!」って言いたいときは英語で何て言うの?
エミリー: うーん、“I should be careful not to bring trouble upon myself.”(自分でトラブルを招かないように気をつけないと)って言えば、近い意味になるかな?
ヒロシ: なるほど、それ使えそう! よし、今度からは余計なこと言わないようにする!
エミリー: うん、それがいいね(笑)。
解説
今回の会話では、「ヤブヘビ」や「藪から棒」といった表現が登場しました。
「ヤブヘビ」(やぶへび)
「ヤブヘビ」とは 「余計なことをして、かえって悪い結果を招く」 という意味の慣用句です。語源は 「藪をつついたら、蛇が出てくる」 ということわざで、何もしなければ問題が起こらなかったのに、余計な行動を取ったせいで思わぬトラブルに巻き込まれる状況を指します。
使用例
- 「部長がミスに気づいてなかったのに、わざわざ報告したら自分の責任にされてしまった。完全にヤブヘビだった…。」
(The manager didn’t notice the mistake, but I reported it, and now I’m the one getting blamed. It was totally yabuhebi…) - 「彼女の年齢を聞いたら、逆に『あなたは何歳?』と詰められてしまった。ヤブヘビだったな…。」
(I asked her age, and she turned it around on me, demanding to know mine. Talk about yabuhebi…) - 「会社の経費でちょっといいランチを食べていたら、同僚が『そんなの経費で落ちるんだ!』と上司に言ってしまった。ヤブヘビだよ…。」
(I was enjoying a nice lunch on the company’s expense account when a coworker said, ‘Oh, that’s covered by the company?’ in front of our boss. Yabuhebi…)
英語では完全に一致する表現はありませんが、近いニュアンスを持つフレーズとして
- "bring trouble upon oneself"(自分でトラブルを招く)
- "stir up trouble"(トラブルを引き起こす)
が使えます。
解説
「藪から棒」(やぶからぼう)
「藪から棒」とは 「突然」や「前触れもなく」 という意味の表現です。語源は 「藪の中から急に棒が飛び出してくる」 という想像しづらい状況からきていますが、日本語では「唐突な発言や出来事」に対して使われます。
使用例
- 「会議中に部長が藪から棒に『お前、来月アメリカに行け』って言い出した。そんなの聞いてないよ!」
(During the meeting, the manager suddenly said, ‘You’re going to America next month.’ I wasn’t prepared for that!) - 「飲み会の席で、藪から棒に『結婚することになった』って発表されてみんなびっくりした。」
(At the drinking party, someone suddenly announced, ‘I’m getting married!’ and shocked everyone.) - 「藪から棒に友達から『お金貸して』ってLINEが来て、何かと思ったら、スマホゲームの課金だった…。」
(Out of nowhere, my friend texted me, ‘Can you lend me some money?’ Turns out it was for a mobile game…)
英語では "out of the blue" が近い表現になります。
「ヤブヘビ」英語で説明する
Yabuhebi (ヤブヘビ)
This Japanese idiom comes from the phrase "yabu wo tsutsuite hebi wo dasu" (藪をつついて蛇を出す), which literally means "poke a bush and a snake comes out." It refers to a situation where someone unnecessarily causes trouble for themselves by interfering or taking unnecessary action.
Example sentences:
- "I tried to clarify the situation, but I ended up making it worse. That was totally yabuhebi!"
- "I shouldn’t have joked about his ex-girlfriend. He got really mad—yabuhebi…"
Yabu kara bou (藪から棒)
This phrase literally means “a stick suddenly coming out of a bush,” but it is used to describe something happening suddenly or unexpectedly. A similar English expression is “out of the blue.”
Example sentences:
- "My boss suddenly told me I’m getting transferred next month—yabu kara bou!"
- "She started crying out of the blue, and I had no idea why."
日本語訳
ヤブヘビ(藪蛇)
この日本語の慣用句は、「藪をつついて蛇を出す(やぶをつついてへびをだす)」という言葉から来ています。直訳すると「藪をつついたら蛇が出てくる」という意味で、「余計なことをして、かえって自分にトラブルを招く」 状況を表します。
例文:
- 「状況を説明しようとしたら、逆にややこしくしてしまった。完全にヤブヘビだった!」
- 「元カノの話を冗談で持ち出したら、めっちゃ怒られた…ヤブヘビだったな…。」
藪から棒(やぶからぼう)
この表現は、直訳すると「藪の中から突然棒が出てくる」という意味ですが、実際には 「突然」「予期しない出来事」 を表します。英語の “out of the blue”(突然に、思いがけず)という表現が最も近い意味を持ちます。
例文:
- 「上司が急に『来月転勤な』って言ってきた。藪から棒すぎる!」
- 「彼女が突然泣き出して、理由が全然わからなかった。」
「ヤブヘビ」は日本語能力試験(JLPT)N2に該当します。