エミリー:この前、遅刻してきたらから随分と言ってやったのに、また遅れたのよ。もう、頭にきちゃう。
ヒロシ:ああ、キャサリンね。彼女みたいなのを「馬の耳に念仏」っていうんだよ。
エミリー:「馬の耳に念仏」? 馬の耳はわかるけど、念仏って何?
ヒロシ:日本のことわざでね。念仏というのはお坊さんが唱える言葉なんだけど、それを馬に聞かせても意味がない。何を言っているかを理解できないからね。
エミリー:へぇ~、面白いわね。でも、英語にも同じような言い方があるわよ。Preaching to deaf earsっていうの。
ヒロシ:ふむ、どんな意味?
エミリー:これは、耳の聞こえない人に説教をするっていう意味で、いくら正しいことを言っても、相手に届かないとか、効果がないっていう状況を指すの。
ヒロシ:なるほどね。日本語の「馬の耳に念仏」とほとんど同じ意味だね。でも英語は「耳」を使うんだ?
エミリー:そうなの。日本語の表現では馬が登場するけど、英語ではただ相手が聞いてくれないという意味で耳にフォーカスしてるのが違うところね。
ヒロシ:似たような言葉に「豚に真珠」というのもあるんだ。これも、豚に真珠を見せても、豚にとっては真珠なんて全く価値のないものだから、意味がない。という意味なんだ。
エミリー:真珠ってパールよね。それなら英語でも同じ表現があるわ「Casting pearls before swine」って言うのよ。価値のあるものを、価値がわからない人に与えるって意味なの。
ヒロシ:へえ、英語にも似たようなことわざがあるんだね。ただ「豚に真珠」は、もともと日本のことわざじゃなくて、聖書から来てるんだよ。日本には江戸時代にキリスト教の布教を通じて伝わったんだって。こういうのが共通してるのは面白いな。
エミリー:へえ、そうだったのね。じゃあ、聖書の教えが日本の文化にも影響を与えたわけね。でも「馬の耳に念仏」はさすがに聞いたことないわ。日本独特ね。意味は同じでも、動物が違うからお国柄が出てて面白い。
ヒロシ:たしかに、そういう違いを見つけると楽しいよね。エミリーが遅刻したキャサリンに言ったことも、まさに「馬の耳に念仏」だったってわけだ。
エミリー:そうなのよ。次はもうちょっと違う伝え方をしようかな。どうせまた同じこと言っても効果がないみたいだしね。
ヒロシ:うん、それが賢いかも。伝え方を変えるのも大事だよね。「豚に真珠」とか「馬の耳に念仏」みたいに、意味が伝わらない相手には、やり方を工夫しないといけないってことだね。
エミリー:本当ね。でも、こんなことわざが会話の中に入ってくるのって面白いわ。少しずつ覚えていったら、私ももっと日本語が上手になれる気がする!
ヒロシ:お、いいね。次に会ったとき、キャサリンにこっそり「馬の耳に念仏」って言ってみたら?
エミリー:(笑いながら)ううん、たぶん伝わらないわ。けど、今度はもっと効果的な伝え方を考えるわね。
ことわざを学ぶことは英語だけではなく異文化理解につながる
ことわざ(proverb)は東西を問わず、さまざまな国や地域で発展してきた短い教訓や知恵を含む表現です。それぞれの文化や習慣に根ざしたことばであり、その国の生活様式や価値観を反映しています。外国語を学ぶ際、これらのことわざに触れることは非常に興味深いですが、同時に難解な場合もあります。
ことわざを理解するためには、その言葉が生まれた背景や文脈に目を向けることが大切です。たとえば、日本語の「馬の耳に念仏」と英語の“preaching to deaf ears”は同じ状況を表しますが、登場する比喩が異なり、それぞれの国の文化を反映しています。こうした違いを学ぶことで、語学だけでなく異文化理解も深まります。
ことわざを学ぶことで、自然な言い回しや豊かな表現力を身につけることができます。さらに、ネイティブスピーカーが日常生活やビジネスで使う慣用句を理解することで、より正確なコミュニケーションが可能になり、自信を持って会話に臨むことができるでしょう。