
エミリーは、日本に留学している他の学生たちとも交流している。ある日、同じ授業を受けている留学生の友達にノートを貸したり、アドバイスをしたりした。ヒロシはその話を聞いて、その留学生がエミリーのライバル的な存在だということを思い出した。そして、日本にはそんな行動を表す面白い表現があることを伝える。
ヒロシ: エミリー、それってまさに「敵に塩を送る」ってやつじゃん!
エミリー: 「敵に塩を送る」? それってどういう意味?
ヒロシ: 簡単に言うと、ライバルや敵に対して、あえて助けることを言うんだよ。
エミリー: えっ、でも私、別に「敵」だと思ってないよ! 確かにライバルかもしれないけど、困っているなら助けるのは普通じゃない?
ヒロシ: まあ、それはエミリーの考え方だね。でも、日本語の「敵に塩を送る」は、ただ「親切」って意味だけじゃなくて、「ライバルを助けたせいで、自分が不利になるかもしれない」という側面もあるんだよ。
エミリー: え、それってつまり、「ばかなやつ」みたいな意味になることもあるってこと?
ヒロシ: そういうふうに言われることもあるよ。例えば、会社の競争で、ライバル企業が困っているときに技術を教えてあげたら、「なんでそんなことをするんだ? それじゃこっちが負けるじゃん!」って言われるかもしれない。
エミリー: なるほどね。でも、私が助けたのはただのクラスメートだし、そんなに大げさな話じゃないよね。英語だったら、"helping a rival in need" って感じかな。でも、そのニュアンスなら、"self-sabotage"(自滅行為)って言い方も合うかも?
ヒロシ: おお、それは面白いな! 「敵に塩を送る」が「正々堂々と戦うための立派な行為」として使われることもあれば、「そんなことしたら損するよ」という皮肉っぽい使い方もできるから、「self-sabotage」に近い場合もあるかもね。
エミリー: じゃあ、場面によってポジティブにもネガティブにも使えるんだね。私がノートを貸したのは「フェアプレー」って意味だから、"fair play" や "good sportsmanship" のほうが合いそうだな。
ヒロシ: そうだね。だから、日本語では文脈によって「すごく立派なこと」とも「ちょっとお人よしすぎる」とも取れるんだよ。
エミリー: なるほど、奥が深いね! でも、私はやっぱり「困ってる人は助けるべき」って思うから、気にしないでおくよ。
ヒロシ: それもエミリーらしくていいと思うよ! でも、日本人と話すときに、この言葉のニュアンスがどう伝わるかはちょっと意識するといいかもね。
エミリー: うん、わかった! ありがとう、ヒロシ!
解説
「敵に塩を送る」 という表現は、敵やライバルが困っているときに、あえて助けることを意味する。由来は戦国時代の上杉謙信が敵である武田信玄に塩を送ったというエピソード。もともとは「戦いは正々堂々とするべきだ」という精神を表しているが、現代では使い方によっては 「そんなことをしたら自分が不利になるのに?」という皮肉の意味 を持つこともある。
エミリーのように、「助けるのが当然」と考える人にとっては、「敵に塩を送る」という表現のネガティブなニュアンスが意外に思えるかもしれない。英語では、ポジティブな意味なら "fair play" や "good sportsmanship"、ネガティブな意味なら "self-sabotage"(自滅行為) や "helping the competition"(競争相手を助けること) などが近い表現になる。
例えば:
- 「試合中に対戦相手が転んだとき、すぐに助け起こした。まさに敵に塩を送る精神だよね。」
→ "He helped his opponent up when they fell during the match. That’s a great example of fair play." - 「マラソン大会で、ライバルが水を切らして困っていたから、自分の水を分けてあげた。敵に塩を送るってこういうことだね。」
→ "During the marathon, his rival ran out of water, so he shared his own. That’s truly helping a rival in need." - 「ライバルに試験のコツを教えてあげたなんて、お人よしすぎるよ。敵に塩を送るようなことをして大丈夫?」
→ "You gave your rival study tips? That’s basically helping the competition!"
「敵に塩を送る」を英語で説明する
Teki ni shio o okuru(敵に塩を送る): This Japanese phrase means "to help one's rival or enemy when they are in trouble." It originates from a historical event in the Sengoku period, where Uesugi Kenshin sent salt to his rival, Takeda Shingen, whose army was suffering due to a salt blockade. The phrase can have both positive and negative meanings. In some cases, it represents fair play and sportsmanship, similar to "helping a rival in need" or "good sportsmanship." However, it can also imply an unwise act that weakens one's own position, which could be translated as "self-sabotage" or "helping the competition."
日本語訳:
「敵に塩を送る」とは、敵やライバルが困っているときに助けることを意味する日本語の表現です。戦国時代、上杉謙信が塩の供給を絶たれた武田信玄に塩を送ったことが由来となっています。この表現は、公正な競争やスポーツマンシップを指すこともあれば、「ライバルを助けて自分が不利になる」という皮肉を込めて使われることもあります。