
試合前日の夕暮れ。ヒロシは大学のグラウンドのベンチに座り、スマホで録画していた対戦相手チームの練習試合を見返していた。中でも一人の選手の動きが、画面の中で異様なほど目立っていた。パス回しのリズム、ボールを受け取る位置、そしてチーム全体を動かすような存在感。
その映像を一緒に見ていたエミリーは、ヒロシの言葉にうなずきながら、ふと「目立つ」という言葉が日本語でしばしば出てくるのを感じ、疑問を口にする。
ヒロシ: この選手、めっちゃ目立ってたんだよ。特に中盤でのポジショニング。
エミリー: 「目立つ」って、「stand out」みたいな意味でいいのかな?でも、いつもポジティブな意味?日本語では色々なところで使われるよね。
ヒロシ: うーん、必ずしもポジティブじゃないかも。たとえば、傷痕が目立つとか、そういう使い方もあるよ。
エミリー: あ、見た目に関しても使えるのね。たとえば、「その服、めっちゃ目立つね」とか?
ヒロシ: そうそう。あと「目立ちたがり屋」って言葉もあるしね。なんか、人前に出たがる人のこと。
エミリー: なるほど。「attention seeker」っぽいニュアンスかな。
ヒロシ: うん、それに近い。でも、たとえば成績が目立って伸びたとか、努力が目立つって言い方もするよ。
エミリー: つまり、「他と比べてはっきり見える」ってことか。感情や印象が浮き上がってくる感じ?
ヒロシ: そんな感じ!いい意味でも悪い意味でも「目につく」ってニュアンスだね。
エミリー: じゃあ、英語だと「stand out」以外にも、「noticeable」とか「conspicuous」も場合によって合うかも。
ヒロシ: うん、なるほどね。今度の試合では、あの「目立つ」選手に要注意だな。
解説:「目立つ」という言葉について
「目立つ」という言葉は、「他と比べてよく見える」「注意を引く」「視覚的・行動的に際立つ」といった意味を持ちます。文脈によってポジティブにもネガティブにも使われます。
語構造の分析
「目」+「立つ」という組み合わせにより、「目に立つ=目につく」「目に入るほど存在感がある」という意味が生まれます。この構造は、日本語特有の視覚と行動を重ねた比喩的表現です。
英語訳との構造比較
英語では「stand out」がもっとも近い表現ですが、「目立つ」が持つ視覚的な自然さや感覚的なニュアンスまでカバーするには不十分な場合もあります。「noticeable」「conspicuous」「prominent」などの語を文脈に応じて使い分ける必要があります。
例文比較
- 傷跡が目立つ。
→ The scar is noticeable. - 成績が目立って伸びている。
→ His academic performance has shown noticeable improvement. - あの子、いつも目立ちたがりだよね。
→ She always wants to be the center of attention.
近いが異なる英語表現との比較
- "Catch one's eye" は「視覚的に一瞬注目される」ことで、「目立つ」の一部の意味に近いが、持続的な存在感には欠けます。
- "Draw attention" は「注目を引く」という意味で、「目立ちたがり」のように意図的な行動を示す際に近い表現になります。
文化的・社会的意味の翻訳
日本語では「目立つ」ことがポジティブにもネガティブにもなりうる一方で、日本社会では「目立ちすぎる」ことが避けられる傾向もあります。英語圏では「standing out」がポジティブに評価されることが多く、この価値観の違いが訳し方に影響します。
「目立ちたがり屋」に対応する英語表現
- attention seeker
例:He's such an attention seeker. Everyone has to look at him.
(彼って本当に目立ちたがり屋で、みんなの注目を浴びたがるんだ。) - show-off
例:She’s a total show-off with her designer bags.
(彼女はブランドバッグを見せびらかす完全な目立ちたがり屋だよ。) - drama queen
例:Don’t be such a drama queen—it’s not a big deal.
(そんなに大げさに騒がないでよ、目立ちたがり屋みたいに。) - spotlight lover
例:He's a real spotlight lover and thrives on public attention.
(彼は本当に注目を浴びるのが好きで、人前で輝くタイプだ。) - likes to be the center of attention
例:She just likes to be the center of attention at every party.
(彼女はどのパーティーでも注目の的になるのが好きなんだ。) - craves attention
例:The kid clearly craves attention from his classmates.
(その子は明らかにクラスメートからの注目を欲しがってるね。)
「目立つ」を英語で説明する
"Medatsu" refers to something or someone that stands out visually or behaviorally from the surroundings—either because it attracts attention naturally, or because it is unusually noticeable, for better or worse.
It can describe appearances, behaviors, performance, or even personality. While it does not always imply intention, it can also refer to situations where someone seeks to stand out deliberately.
日本語訳:
「目立つ」とは、外見や行動、成績などが周囲と比べて際立って見える状態を指します。それは自然に注目を集める場合も、異様に目を引く場合もあり、良い意味でも悪い意味でも使われます。必ずしも意図的である必要はありませんが、自分から目立とうとする場合にも使われます。
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