ヒロシはキャンパス内で、エミリーを見かけました。
ヒロシ:エミリー! 少し、時間ある?
エミリー:ヒロシ、ランチの前の講義は休みだから午後の講義まで少し時間とれるけど、どうして。
ヒロシ:いや、今日はね、少し時間を取って英語の勉強をしたいんだ。当然、エミリーにとっては日本語の勉強になるんだけどね。
エミリー:今日は始めから質問があるのね。
ヒロシ:そう。
エミリー:わかったわ、じゃ、カフェテリアで待ち合わせしましょ。
ヒロシ:了解
カフェテリア内にて
ヒロシ:早速だけど、今日は「かける」についてなんだ。
エミリー:「かける」って、文字が「書ける」のかける?
ヒロシ:確かに「書ける」も発音は「かける」だけど、そうじゃなくて、「メガネをかける」とか、「電話をかける」、「お金をかける」、「掃除機をかける」とかね。その他にもいろいろあるんだ。
エミリー:聞いたことがあるわね。でも、詳しい分け方はまだ良くわからないわ。
ヒロシ:でしょ。「かける」という発音はどれも同じだからね。エミリーも困ってるんじゃないかなと思って。
エミリー:興味あるわ。教えて
ヒロシ:今日は紙にまとめて来たんだ。
まず、「かける」というのは漢字にすると大体5つに分かれるんだ。
掛ける
- 装着・取り付け(何かを体や物に取り付けたり、装着したりする)
- メガネを掛ける(メガネを装着する)
- 絵を掛ける(絵を壁に固定する)
- 布団を掛ける(布団を身体につける)
- 操作・動作の開始(何かを操作したり、動作を始める)
- 電話を掛ける(電話を使って通話を始める)
- エンジンを掛ける(エンジンを始動する)
- タイマーを掛ける(タイマーを設定する)
- 掃除機を掛ける(掃除機を使う)
- 注ぐ・振りかける(液体や物を何かに注いだり、振りかけたりする)
- 水を掛ける(何かに水を注ぐ)
- 呪いを掛ける(呪文や魔法を使って呪う)
- 負担・影響を与える(誰かに負担や影響を与える)
- 負担を掛ける(誰かに負担をかける)
- 期待を掛ける(誰かに期待を寄せる)
- 保険を掛ける(保険に加入すること、リスクを軽減する)
- 鍵やロックの操作(鍵を使って何かを閉めたり、固定する)
- 鍵を掛ける(ドアや窓に鍵をかけて閉める)
- 座る・腰を下ろす(椅子や物に座る)
- 椅子に掛ける(椅子に座る)
- 会話・コンタクトの開始(誰かに声をかけたり、話しかける)
- 声を掛ける(誰かに話しかける)
- 開始・仕掛け(何かを始める、特に特定の行動を開始する)
- 勝負に掛ける(勝負に全力を注ぐ)
賭ける(リスクを取る・賭け事)
- 競馬にお金を賭ける(ギャンブルにお金をかける)
- 勝負に全財産を賭ける(勝負に全てを投じる)
- 友達と結果を賭ける(結果について賭ける)
懸ける(重大なものをかける・真剣に取り組む)
- 人生をこの一戦に懸ける(全てを賭ける)
- 彼は家族のために命を懸けた(命をかける)
- 夢を実現するために時間を懸ける(時間を投入する)
欠ける(一部がなくなる・不完全になる)
- お皿が欠ける(物が一部失われる)
- 集団の中で一人欠ける(人が足りなくなる)
- 月が徐々に欠けていく(月の一部が欠ける)
駆ける(走る・速く移動する)
- 子供が公園を駆け回る(走り回る)
- 馬が草原を駆ける(速く走る)
- ゴールに向かって全力で駆ける(全力で走る)
架ける(橋や構造物を建設する)
- 橋を架ける(橋を建設する)
- 道路を架ける(道路を設置する)
- 鉄道を架ける(鉄道を建設する)
どう、わかりやすいでしょ。
エミリー:確かに、主要な使い方毎にわかれていて、わかりやすいわ。
同じ「かける」でも漢字によって違うんだね。でも「掛ける」以外の「かける」は大体同じ意味のようだけど、「掛ける」は同じ漢字でも使い方がいろいろあるみたいね。
「椅子」も「メガネ」も「声」も同じ掛けるなんて外国人だったらまぁわからないわね。
ヒロシ:日本人だって、厳密に意味と漢字を理解して使い分けられる人は少ないと思う。
国語の試験にも、どの「かける」をあてはめるかを試す問題もあるしね。
じゃあ、エミリー、まず「掛ける」がわかったところで、それぞれの「掛ける」を英語にしてみてよ。
これをすれば、日本語の理解度はグッと上がると思うよ。 それに、僕も英語が勉強できるし。
紙、用意してきたから、ここに書いて。
エミリー:わかったわ。
掛ける
装着・取り付け(何かを体や物に取り付けたり、装着したりする)
- メガネを掛ける(メガネを装着する)
- Example: "She puts on her glasses."
- メガネを装着する。
- 絵を掛ける(絵を壁に固定する)
- Example: "They hang a painting on the wall."
- 絵を壁に掛ける。
- 布団を掛ける(布団を身体につける)
- Example: "He covers himself with a blanket."
- 布団を体に掛ける。
- 掃除機をかける(掃除機で床を掃除する)
- Example: "She vacuums the floor." 掃除機で床を掃除する。
操作・動作の開始(何かを操作したり、動作を始める)
- 電話を掛ける(電話を使って通話を始める)
- Example: "He makes a phone call."
- 電話を掛ける。
- エンジンを掛ける(エンジンを始動する)
- Example: "She starts the engine."
- エンジンを始動する。
- タイマーを掛ける(タイマーを設定する)
- Example: "He sets a timer."
- タイマーを設定する。
注ぐ・振りかける(液体や物を何かに注いだり、振りかけたりする)
- 水を掛ける(何かに水を注ぐ)
- Example: "She pours water on the plants."
- 植物に水を掛ける。
- 呪いを掛ける(呪文や魔法を使って呪う)
- Example: "He casts a curse."
- 呪いを掛ける。
負担・影響を与える(誰かに負担や影響を与える)
- 負担を掛ける(誰かに負担をかける)
- Example: "Don’t put too much pressure on him."
- 彼に負担を掛けないで。
- 期待を掛ける(誰かに期待を寄せる)
- Example: "They place high expectations on her."
- 彼女に大きな期待を掛ける。
- 保険を掛ける(保険に加入すること、リスクを軽減する)
- Example: "She takes out insurance."
- 保険を掛ける。
鍵やロックの操作(鍵を使って何かを閉めたり、固定する)
- 鍵を掛ける(ドアや窓に鍵をかけて閉める)
- Example: "He locks the door."
- ドアに鍵を掛ける。
座る・腰を下ろす(椅子や物に座る)
- 椅子に掛ける(椅子に座る)
- Example: "She sits down on the chair."
- 椅子に掛ける。腰掛けるとも言う。
会話・コンタクトの開始(誰かに声をかけたり、話しかける)
- 声を掛ける(誰かに話しかける)
- Example: "He speaks to her."
- 彼女に声を掛ける。
開始・仕掛け(何かを始める、特に特定の行動を開始する)
- 勝負に掛ける(勝負に全力を注ぐ)
- Example: "He stakes everything on the game."
- 勝負に全力を掛ける。
ヒロシ:日本語では掛けるだけだけど、英語はほぼ動詞が全部違うね。
エミリー:そこが、日本語の大変なところよね。でも、逆に言えば、覚えたら「かける」だけで済むので楽よね。
ヒロシ:じゃ、次は「賭ける」だ。
エミリー:わかったわ
賭ける(リスクを取る・賭け事)
- 競馬にお金を賭ける(ギャンブルにお金をかける)
- Example: "She bets money on horse racing."
- 競馬にお金を賭ける。
- 勝負に全財産を賭ける(勝負に全てを投じる)
- Example: "He stakes his entire fortune on the game."
- 勝負に全財産を賭ける。
- 友達と結果を賭ける(結果について賭ける)
- Example: "They bet on the outcome with their friends."
- 友達と結果を賭ける。
賭けるは大体同じ意味なのでそんなに難しくないわね。
ヒロシ:でも、漢字で見ているからね。 これがひらがなや、聞いただけで「かける」だとどの「かける」か判別するのが大変なんだけどね。
次は「懸ける」だ
懸ける(重大なものをかける・真剣に取り組む)
- 人生をこの一戦に懸ける(全てを賭ける)
- Example: "He stakes his life on this one battle."
- 人生をこの一戦に懸ける。
- 彼は家族のために命を懸けた(命をかける)
- Example: "He risked his life for his family."
- 彼は家族のために命を懸けた。
- 夢を実現するために時間を懸ける(時間を投入する)
- Example: "She devoted time to making her dream come true."
- 夢を実現するために時間を懸ける。
エミリー:この「懸ける」は「賭ける」とちょっと似ているのね。
ヒロシ:確かに。日本人も漢字にすると混同する人、多いと思うよ。
次の、「欠ける」そんなに難しくはないと思うし、他の「かける」と違ってアクセントが違うな。だから聞いているとどの「かける」かがわかると思う。
欠ける(一部がなくなる・不完全になる)
- お皿が欠ける(物が一部失われる)
- Example: "The plate is chipped."
- お皿が欠ける。
- 集団の中で一人欠ける(人が足りなくなる)
- Example: "One person is missing from the group."
- 集団の中で一人欠ける。
- 月が徐々に欠けていく(月の一部が欠ける)
- Example: "The moon gradually wanes."
- 月が徐々に欠けていく。
ヒロシ:では次は「駆ける」だね。この「駆ける」は「走る」「速く移動する」という意味で使うんだ。
駆ける(走る・速く移動する)
- 子供が公園を駆け回る(走り回る)
- Example: "The children run around the park."
- 子供が公園を駆け回る。
- 馬が草原を駆ける(速く走る)
- Example: "The horse gallops across the field."
- 馬が草原を駆ける。
- ゴールに向かって全力で駆ける(全力で走る)
- Example: "He sprints toward the finish line."
- ゴールに向かって全力で駆ける。
エミリー:この「駆ける」は、動きが速いイメージがあるわね。すぐに覚えられそうだわ。
ヒロシ:その通りだよ。では最後に「架ける」だ。「架ける」は「橋や構造物を建設する」という意味で使うんだ。
架ける(橋や構造物を建設する)
- 橋を架ける(橋を建設する)
- Example: "They build a bridge."
- 橋を架ける。
- 道路を架ける(道路を設置する)
- Example: "The engineers construct a road."
- 道路を架ける。
- 鉄道を架ける(鉄道を建設する)
- Example: "They lay down a railway."
- 鉄道を架ける。
エミリー:なるほど、この「架ける」は建設や構造に関する意味なのね。これも覚えやすいわ。
あ、1つ加えると、エミリーが最初に言った「書ける」みたいに、日本語には同じ「かける」って発音でも、いろんな意味があるんだ。例えば、「書ける」っていうのは文字や文章を書くことができるって意味だし、「描ける」は絵や図を描くことができるって意味になるんだ。
エミリー:確かに、どちらも「かける」だけど、意味が全然違うのね。
ヒロシ:そうだね。日本語では、同じ発音の言葉がたくさんあって、漢字によって意味が変わるんだ。「書ける」や「描ける」は、動詞「書く」や「描く」に、助動詞「れる」が加わって「~することができる」って意味になるんだよ。「書ける」は文字を書くことができる、「描ける」は絵を描くことができるって意味になるんだ。
エミリー:日本語を勉強している外国人にとっては、こういう同音異義語がたくさんあるのは混乱するけど、漢字を見れば違いがわかるんだね。
ヒロシ:その通りだよ。だから、文脈や漢字をよく理解することが大切なんだ。「書ける」は文字を書く、「描ける」は絵を描くって覚えておくといいよ。
エミリー:うん、わかったわ。こういう違いを理解すると、日本語がもっと面白くなるね。
今日は一度に沢山の「かける」を知って、正直困惑しているわ。復習しなければね。
ヒロシ:僕も、それぞれの「かける」の英語例文を知って勉強になったよ。