今まで、「水くさい」と「水入らず」をエミリーとヒロシの会話の中でとりあげました。
日本には水くさい、水入らず意外にも「水」を使った言葉や表現が数多く存在します。水は私たちの生活や自然環境に密接に結びついているため、その象徴として使われることも多いのです。今回は、「水くさい」「水入らず」以外の水にまつわる表現について、その由来や近い英語表現を紹介し、さらには日本語に水を使った表現が多い理由を考察していきます。
1. 水を得た魚(みずをえたさかな)
意味: 自分に適した環境で、存分に力を発揮する様子。
由来: 魚が水中でこそ生き生きと活動できるように、人も自分に最適な環境でこそ最大限の力を発揮できるという意味です。仕事や趣味など、適材適所が発揮される場面でこの表現はよく使われます。
近い英語表現: A fish in water / In one's element
英語例文:
She’s like a fish in water at her new job.
(彼女は新しい職場でまるで水を得た魚のようだ。)
2. 水を差す(みずをさす)
意味: 良い雰囲気や進行中の物事を妨げる行為をすること。
由来: 火に水をかけて消すように、物事が順調に進んでいる最中に、余計なことをして勢いを止めてしまう様子を表しています。職場や会話の中で、急に否定的な意見を述べたり、不要な介入をする場合に使われます。
近い英語表現: To throw cold water on something
英語例文:
He threw cold water on our plans with his negative attitude.
(彼の否定的な態度が私たちの計画に水を差した。)
3. 水に流す(みずにながす)
意味: 過去のいざこざや問題を忘れて、新たにスタートすること。
由来: 川の流れのように、過去の問題や争いごとを水に委ねて忘れてしまうことを表現しています。人間関係において、特に和解や再出発を意図する場面で使われることが多いです。
近い英語表現: Let bygones be bygones
英語例文:
Let’s let bygones be bygones and move forward.
(過去のことは水に流して、前に進もう。)
4. 水もしたたる(みずもしたたる)
意味: 外見が非常に魅力的で、特に男性に対して「非常にかっこいい」「魅力的である」という意味で使われる。
由来: 「水もしたたるほどの美しさ」という表現が元で、滴り落ちる水のようにみずみずしく、外見が清潔で魅力的であることを意味します。特に男性の見た目を褒める表現として使われます。
近い英語表現: Drop-dead gorgeous / Handsome as can be
英語例文:
He walked in, looking drop-dead gorgeous in his suit.
(彼はスーツ姿で現れ、その姿はまさに水もしたたるほどだった。)
この表現は、外見だけでなく、その人の全体的な魅力や清潔感を強調するために使われます。英語でも「drop-dead gorgeous」という表現は、同じように人の外見的な魅力を強調する際に使われます。
5. 水も漏らさぬ(みずももらさぬ)
意味: 非常に厳重で、隙が全くない状態。
由来: 完全に遮断された状態や、隙間なく何かを守っている状況を表現するために使われます。特に厳重な警備や完全な計画に対して使われることが多いです。
近い英語表現: Watertight / Impenetrable
英語例文:
The security system is watertight; there’s no way to get in.
(このセキュリティシステムは完璧で、侵入は不可能だ。)
日本語に「水」を使った言葉が多い理由
日本語には「水」を使った言葉が非常に多くありますが、その背景には日本の自然環境や文化が大きく影響しています。日本は四方を海に囲まれ、また国内にも多くの川や湖、温泉といった水源が点在する国です。このため、水は古くから日本人の生活に欠かせない存在であり、その象徴としても重要な役割を果たしてきました。
さらに、水は日本文化において「清らかさ」や「柔軟性」、「浄化」の象徴として使われることが多く、自然や人生の流れ、移り変わりを表現する際に多くの比喩表現が生まれました。水は時に厳しい自然の力として災害をもたらすこともありますが、それと同時に恵みをもたらす存在でもあります。日本人はそうした水の二面性を深く理解し、それが言葉の表現にも影響していると考えられます。
また、水は形がなく、どんな容器にもその形に合わせて柔軟に変化するという特性を持っています。このため、水のように柔軟に対応することや、物事を流して受け入れる態度が日本文化に根付いているのかもしれません。このように、水を使った表現は日本語の中で豊かな表現力を持つ要素の一つとして、多くの場面で使われてきたのです。