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「手柄」成功しても言いにくい日本独自の言葉を英語で

ヒロシがサークルの飲み会帰り、駅のベンチでぼんやりしていると、偶然エミリーが通りかかった



エミリー: あれ、ヒロシじゃない?こんなところで何してるの?大丈夫?

ヒロシ: あ、エミリー。うん、大丈夫。ちょっと、帰る前にひと息ついてた。

エミリー: なんか、元気なさそう。何かあった?

ヒロシ: うーん、サークルの飲み会でね、後輩のトオルが、俺のプレーのことを「ヒロシ先輩のおかげで勝てました!」って言ってくれてさ。

エミリー: 良かったじゃない。それって嬉しいことじゃないの?

ヒロシ: うん、でも、そのあと先輩たちが「いやいや、チームみんなの力だよ」とか「おまえが手柄を独り占めするなよ」って笑いながら言ってさ。別にそんなつもりじゃなかったんだけど、なんか…居心地悪くなっちゃって。

エミリー:手柄」って…あ、"achievement" みたいな意味?

ヒロシ: うん、まあそうだけどね。手柄という言葉は…ちょっとニュアンス違うかも。人より目立つ結果を出した、みたいな。で、それがちょっと「出しゃばってる」って思われたりもする。

エミリー: なるほど。英語だと、"credit" に近いかも。「功績」とか「誰の功労か」をめぐる感じ?

ヒロシ: ああ、それ近いかも!功労とか、目に見える成果っていうか。でも、それを褒められると逆に気まずいときもある。

エミリー: 日本では、あんまり「私の手柄です」とは言えないってこと?

ヒロシ: うん、すごく言いにくい(笑)。なんか謙虚じゃないって思われるし、チームワークを重んじる文化だから。ま、冗談でいうなら良いけどね。

エミリー: なるほど…。アメリカだと、「チームの中で特に頑張った人」がちゃんと評価されるのも大事って考えが強いから、ちょっと違うね。

ヒロシ: うん。でも…本当は、ちょっとだけ誇らしかったんだよな。トオルが言ってくれたこと。

エミリー: それでいいと思うよ。誇らしいことだもん。ちゃんと自分の手柄を受け止めてもいいと思う。

ヒロシ: ありがとう。エミリーって、やっぱり話すとホッとするな。

解説・「手柄」という言葉について

「手柄(てがら)」とは、努力や行動によって得た目に見える功績や成果を意味します。戦いや仕事、スポーツなどの場面で「手柄を立てる」「手柄を認められる」などの形で使われ、その人の活躍が他人から明確に評価されるような状況を表します。

この言葉には、「人より優れた結果を出した」というニュアンスが含まれますが、その一方で、自分の手柄をあからさまに主張することがはばかられるという、日本語特有の対人関係的な含意もあります。特に日本文化では、謙遜や集団の調和が重視されるため、自分だけが功績を得たように見える状況は、周囲への配慮が必要とされることも少なくありません。

そのため、英語に訳す際には単に “achievement” や “credit” と置き換えるだけでは十分でないことがあります。たとえば “She took all the credit” のように訳すと、「手柄を独り占めした」という批判的なニュアンスが強く出すぎる場合もありますし、逆に “She was praised for her achievement” では、「目立つ成果」という側面はあっても、「周囲との関係に配慮しながら評価を受ける」ような日本的な感覚までは伝えきれない場合があります。

つまり、「手柄」は単なる成果ではなく、誰の功績か、どのように認められるか、そしてそれをどう扱うべきかといった繊細な社会的文脈を含む語です。英訳する際は、単語の意味だけでなく、場面や登場人物の立場に応じてニュアンスを調整する意識が求められます。

一方で、アメリカのような個人主張を重んじる文化では、自分の功績をはっきりと述べることが肯定的に受け止められる場面も多くあります。ただし、その場合でも「協調性を欠く」ような言い方は敬遠されることがあり、状況や言い回しには注意が必要です。

例文:

  • He took all the credit for the project, even though it was a team effort.
     (あれはチームの仕事だったのに、彼はプロジェクトの手柄を全部自分のものにした。)
  • She was praised for her achievement in increasing sales.
     (彼女は売上を伸ばした手柄で称賛された。)

「手柄」を英語で説明する

"Tegara" refers to a visible achievement or accomplishment, often in a context where effort and success are recognized. In Japanese culture, however, openly claiming one’s own success can be frowned upon, as modesty and group harmony are valued. The word can imply a kind of merit that others may or may not acknowledge, and boasting about it may be seen negatively.

「手柄」とは、努力の結果として現れる目に見える成果や功績を意味します。ただし日本文化では、自分の成功を公に主張することは好ましくないとされる場合があり、謙虚さや集団の調和が重んじられます。この言葉には、他人から認められる功労という意味と、自己主張による反感を買う可能性のある成果という二面性があります。

手柄のJLPTの目安レベル

N2相当


※日本語能力試験(JLPT)では、出題語彙の公式リストは公開されていません。このレベル表示は、実際の試験問題や教材に基づいた目安として記載しています。

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