エミリー:見て、この前、こういう花を見かけたの。
エミリーはスマホの写真をヒロシに見せる。
ヒロシ:あ、それは「彼岸花」だね。秋に咲く代表的な花なんだ。どこで見たの?
エミリー:東京郊外へ、みんなとちょっとしたハイキングに行ったのよ。そしたら、人の家の花とは思えない場所で結構見かけたの。野草なのかな?
ヒロシ:その花はね、見た目は鮮やかな赤できれいだけど、その花のイメージは決して明るくはないんだよ。
エミリー:え、どういうこと?
ヒロシ:彼岸花は「死」や「別れ」を象徴する花なんだ。特に墓地の近くでよく見かけるから、昔から「死人花」なんて呼ばれたりもしてる。日本ではお彼岸の頃に咲くから、その名前が付いたんだよ。
エミリー:へぇ、そんなに深い意味があるのね。でも、どうして「死」と結びついてるの?
ヒロシ:いくつか理由があるんだけど、一つは墓地や田んぼのあぜ道に植えられていることが多いから。昔は動物が墓を荒らすのを防ぐために、毒を持つこの花を植えたって言われてるんだ。それに、お彼岸っていうのは、亡くなった人の供養をする時期だから、その時期に咲く彼岸花が「死」を連想させるんだよ。
エミリー:なるほどね。きれいな花なのに、毒を持ってるなんて、見た目からは全然想像できないわ。そういう意味でも、この花はただのきれいな花じゃないのね。そんな不思議なイメージを持ってるなんて驚きだわ。
ヒロシ:そうだよね。外国の人は特に驚くかもしれない。日本では自然の中に生と死が共存しているって考え方があって、彼岸花もその一部なんだ。
エミリー:日本って、本当に奥深い文化があるのね。アメリカでは見たことがないし、もしその意味を知らなければ、ただきれいな花で終わってしまうわね。やはりこうして日本の文化に接して、その背景を知ることで、日本という国をもっと理解できるようになるのね。
ヒロシ:実は、彼岸花は日本原産じゃなくて、中国から伝わってきた花なんだよ。
しかし、その彼岸花のイメージも段々と変わって来ると思うよ。いまは、都市化が進んで田んぼが少なくなってきているし、昔のようにお墓に植えることもなくなってきたんだよ。。そうしている内に過去の彼岸花の持つイメージというのは段々変わってくると思う。実際、今では彼岸花を楽しむための観光地として有名な場所もあるんだよ。たとえば、埼玉県日高市の巾着田というところとか。
そういえば、彼岸花の彼岸というのは、この前教えた「お彼岸」の彼岸と同じ字を書くんだ。お彼岸の時期に咲く花だからね。
エミリー:お彼岸ね、しっかり覚えているわ。でも、彼岸花のイメージ、時代が変わるというのはそういうことなのよね。
アメリカの友だちにはこうやって説明するわ。
The red spider lily, which you might come across in Japan, has a meaning that's much deeper than its appearance suggests. Although it's a strikingly beautiful flower with its vibrant red color, in Japanese culture, it symbolizes death and farewell. These flowers are often planted near graveyards and rice paddies because they are associated with protecting the dead and the harvest. The flower blooms during the autumn equinox, a time when people in Japan honor their deceased loved ones, adding a spiritual connection to this season.
Additionally, due to the plant's toxicity, it was traditionally planted to protect graves and fields from animals, which is why it's often seen near these places. This combination of beauty and danger makes it a symbol of both life and death, which is a common theme in Japanese culture. Without knowing this cultural background, it might seem like just another beautiful flower, but learning these details helps you understand Japan's unique traditions and deeper connection to nature and the cycle of life and death. |
訳
「日本で見かける彼岸花は、その見た目以上に深い意味を持っています。鮮やかな赤い花でとても美しいですが、日本文化では『死』や『別れ』を象徴しています。彼岸花は、墓地や田んぼの近くによく植えられているのですが、これは亡くなった人々や収穫を守るために植えられてきたからです。この花が秋分の日の頃に咲くことで、日本人が亡くなった愛する人々を敬う時期と重なり、特別な精神的な意味を持つようになりました。
また、彼岸花は毒を持っているため、昔は動物から墓や田んぼを守るために植えられていたことから、このような場所でよく見かけます。この美しさと危険さが共存していることが、日本文化における『生と死』というテーマと深く結びついています。この文化的背景を知らなければ、ただの美しい花に見えるかもしれませんが、こういった詳細を知ることで、日本の独特な伝統や、自然や生と死のサイクルへの深い理解を得ることができます。」
という感じね。
解説
彼岸花(ひがんばな)は、秋に咲く日本の代表的な花の一つで、「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」とも呼ばれています。この花は、日本原産ではなく、古代中国から伝わってきたと言われています。9月の「お彼岸」の時期に墓地や田んぼのあぜ道でよく見かけられることから「彼岸花」という名前が付けられました。
その鮮やかな赤い花は美しいものの、昔から「死」や「別れ」を象徴する花とされており、特に墓地の近くでよく見かけるため「死人花」や「幽霊花」など、やや不気味な別名があることも特徴です。また、彼岸花には毒があるため、昔は動物が墓や田んぼを荒らさないように植えられていました。
彼岸花の英語名 英語では「Red Spider Lily」(レッド・スパイダー・リリー)と呼ばれています。この名前は、花の形が蜘蛛の足のように見えることに由来しています。他にも「Cluster Amaryllis」という名前が使われることがありますが、一般的には「Red Spider Lily」の方がよく知られています。しかし、現物の花がアメリカにはほとんど存在しないため、この名前を聞いてもすぐにわかる人は少ないでしょう。それでも、この花はその美しさと強烈なイメージから、日本だけでなく海外でも徐々に注目されつつあります。特に、彼岸花は文学やアニメなどで取り上げられることが多く、それを通じて知る機会が増えているようです。