ヒロシ:この前教えた言葉「こねる」って覚えている?
エミリー:うん、パンの生地をこねる「こねる」でしょ。食べ物以外にも「こねる」が使われるって教えてくれたのも覚えてるわ。たとえば「理屈をこねる」とか。
ヒロシ:そうだね。「理屈をこねる」みたいに、何度も無理な理由を言ってごまかそうとすることでも使うよ。それでね、今日お店でお客さんと店員のやり取りを聞いていて、ふと思い出したのが「ごねる」なんだ。
エミリー:「ごねる」?「こねる」とにているわね。意味は?
ヒロシ:うん、言葉の響きも似ているし、実は「ごねる」は「こねる」から派生したと言われているんだ。「こねる」は、生地を何度も押したり引っ張ったりして形を整えるでしょ。それと同じように、「ごねる」は何度も不満や要求をしつこく繰り返して、相手を根負けさせようとする意味なんだ。
エミリー:ああ、何度も繰り返すっていう点では、「こねる」と共通する部分があるのね。
ヒロシ:その通りだよ。「ごねる」は、何かを主張するだけじゃなくて、しつこさや迷惑をかける感じが含まれているんだ。だから、単に交渉しているのとは違って、どこか相手を困らせるような印象になるんだよ。
エミリー:なるほど。普通の交渉や主張は必ずしも悪くないけど、「ごねる」となると、少し嫌な感じがあるのね。
ヒロシ:うん。たとえば、お客さんが「待たされたんだから、もっと値段を安くしてくれないか」って、店員にしつこくごねていた場面があったんだ。
エミリー:それなら、英語では "He kept complaining persistently, saying, 'Since I had to wait, can’t you give me a discount?'"(待たされたんだから値引きしてくれないかとしつこく不満を言い続けた)って感じになるわね。
ヒロシ:うん、それが近い表現だね。ビジネスでも「ごねる」って言うんだ。たとえば、「納期をもっと延ばしてほしい」と取引先がしつこくごねてきた、なんて場面もよくあるよ。
エミリー:それなら、"They kept making a fuss about the delivery date."(彼らは納期について大騒ぎしていた)とか、"He’s dragging his feet on signing the contract."(彼は契約にサインするのを渋っていた)みたいに言えるわね。
ヒロシ:そうそう。でも「ごねる」は、ただの交渉じゃなくて、相手に不快感を与えるようなしつこさが含まれているんだよ。そういう部分がこの言葉の特徴なんだ。
エミリー:なるほど、日本語の「ごねる」には、ただの主張ではなく、困らせるニュアンスがあるのね。
ヒロシ:そういうこと。だから、相手を疲れさせて自分の意見を通そうとする場面で使われることが多いんだ。
エミリー:面白いわね。言葉の背景やニュアンスを知ると、ただ単語を覚えるだけじゃなく、どんな場面で使うかもわかるから勉強になるわ。
ヒロシ:そうだね。こういう細かいニュアンスが分かると、もっと自然な日本語が話せるようになるよ。
エミリー:ありがとう、ヒロシ。これで「ごねる」と「こねる」の違いがよくわかったわ。次はどんな日本語を教えてくれるのか楽しみだわ。
解説:
「ごねる」が「こねる」から正式に派生したという文献は存在しません。しかし、「こねる」と「ごねる」の言葉の響きや、繰り返しや粘り強さのイメージが共通していることから、類似性があると推測されています。「こねる」が物理的な行為を表すのに対し、「ごねる」は精神的に要求を繰り返し、相手に迷惑をかけることが特徴です。このため、「ごねる」は、ネガティブなニュアンスを含む言葉として使われることが多いと考えられます。